★円熟にして意気軒昂なさりげなき精力的躍進が続く本邦モダン・アルトサックスのヴェテラン大御所:池田篤(1963年横浜生まれ)の、今回は、吉田桂一(p)&上村信(b)とのドラムレス・トリオによる、いずれのトラックでも有名スタンダード曲のコード進行を使いながら新たなメロディーを乗せてゆく、という独自の"替え歌"をレパートリーとした中々ユニークな一編。
★自然に発する人声のような、優しさと温もりに溢れ、それでいて爽涼でもありパンチやキレを効かせてくるところもある、ニュアンスに富みつつも作為なげな端麗トーンのアルトが、リキみを解きゆったりとレイドバックした調子で滑脱な中にもメリハリのある歌性満点のメロディック・スインギー・プレイをただ呼吸するかの如く軽やかに綴って、スッキリ清々しくも小粋な含蓄余情漂う"風流詩人の奥義"とも云うべき妙味を飄々と揮い、より硬質に角張った殺陣風のバップ・フレーズを繰り出すピアノもアルトとのコントラスト鮮やかに際立ち、またおぼろかつ太く重い鳴り様でウネりながら憂き詩情を活写するベースも力強いドライヴ感をもってコク深く彩りを添えた、全体を通じドラムレスならではの幾分柔らかな丸みを帯びたトータル・サウンドも心地よく憩いの抒情世界を快調に愉しませる、何げに練達した好演内容。
★親しみやすい人情味もたっぷりに"唄う"ことと安定律動的ノリのよさを何より大切にし、一貫してインティメイトな和気やリラクゼーションを底流させた、ドラムの不在が上手くラウンジ・ムードを高める美旋律満載の寛ぎリリカル・バップ妙演が、終始落ち着いた穏やかな息遣いで藹々と進められてゆき、吉田(p)の歯切れよく引き締め役を担う鋭角的アクションや、上村(b)の包容力満点に暖炉のような味を見せるノリノリの波打ち、も各々旨口な好アクセントを成す中で、主役:池田(as)の晴々朗々の爽やかな表情で流れに身を任せるかの如き一切無理のないアドリブ妙技が、スイスイと抜群の推進力と美味さでもって冴え渡っており実に鮮やか。
→衒わず巧まぬごくナチュラルなフリーハンド・スケッチに軽々興じるようでいて、その語り口は熟練した類稀な歌心〜メロディー・センスにしっかり裏打ちされた殊の外美しい、そして感動的なストーリーラインを事も無げに描ききっており、また、原曲=スタンダード・ナンバー本来の情緒を重んじる面と、そこから幾分離れて池田独自の音風景を映し出す面、との兼ね合いバランス〜微細な制御力の利かせ様がまた見事(但、これがスタンダード曲の新解釈だなどと大上段に構えるようなところは微塵もなく、そのあるがままの自然な姿は正に洒脱の極み!)で、芸風としては、モードよりもバップ傾向が強く、しかしパーカーと云うよりはコニッツ辺りを更にソフト・スウィート化したような、スムース感溢れる一種の"ロマンティック・クール派"とでも云えそうな耳触りのいいサウンドが瑞々しく立ち現れていて絶品だ。
01. Tipsy
02. Treat Me Right
03. How Near, How Far
04. Taste Of Tears
05. Revol
06. And Then One Day
07. Street
08. I Know Are What You Are
09. Until Then
10. A Moon Above Me
11. The Summer's Gone
池田 篤 Atsushi Ikeda (alto saxophone)
吉田 桂一 Keiichi Yoshida (piano)
上村 信 Shin Kamimura (bass)
2024年5月28日TARO Okamoto memorial museum(岡本太郎記念館/東京都港区南青山)録音
レーベル:
Days of Delight
御予約商品
2024年12月19日発売予定 受注締切:2024年11月27日
国内制作CD
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