★依然ラジカル&チャレンジングな未知の音楽探究を続け、ハイペースで新作を送り出してくる本邦フリー派ピアノの急先鋒:藤井郷子(1958年東京都生まれ)の、田村夏樹(tp)&井谷享志(ds,per,vib)との変則トリオ:This is It!による最新アルバム;全曲藤井のオリジナル。
★クラシックや現代音楽に通じる荘厳シリアスさ(〜幾何学テイスト)とフリー・ジャズならではのアブストラクト&パーカッシヴな力学性を併せ持ち、独特のダークネス並びに硬質ダイナミズムを濃く湛えたピアノの殺陣的ヒット技がミステリアス&ノワールに憂きロマン仄めく煌めきを放ち、ハード・ビターなコワモテ咆哮の中にバップの影を残したトランペットの吹鳴が中々豊かに旨味を発散、そしてシャープ&センシティヴでいて不気味な怪しさ・起爆感を秘めたドラム/パーカッションの這い回るような遊撃もサスペンスとグルーヴを的確に体現した、全編に渡りその正三角形っぽい即興インタープレイの連続で心地よい緊迫と深い情趣を満喫させてくれる濃密内容。
★ストレンジ&ビザールな異形さや抽象性に溢れながらしかしどのトラックも「曲」らしい情緒性を決して欠くことがない、藤井流の辛口にしてリリカルなフリー・ジャズ世界がリアル・インプロ要素をふんだんに盛り込みつつ超スリリングに創出されてゆき、摺り足でジワジワ躙り寄るもしっかりスイングする井谷(ds)や、鋭利な突発爆裂性と芳醇な吟醸感を交錯させて凛々しくファンファーレのように歌う雄壮さみなぎった田村(tp)、らの活躍もそれぞれ鮮烈に際立つが、何より先ず座長である藤井(p)のただならぬハイテンションさをもって猛ハッスルする緩急も巧みな完全燃焼ぶりが、問答無用に傑出していて圧倒される。
→例によって思索瞑想性を濃厚に孕んだ心象スケッチ風の半バラード的グルーミー節に余情豊かな魅力を見せる他、時にはセシル・テイラーや山下洋輔辺りにも通じる強硬打楽器型の絨毯爆撃攻勢でワイルドに迫ったりと、その、気力も充実しきりイマジネーションも理想的潤沢状態を示した精悍軒昂かつロマネスクな絶好調のインプロヴィゼーションには、理屈を越えて昂揚させられまくりこれはもはや降参するしかない。
1. Message (8:41)
2. Cryptography (8:49)
3. Falafel Feast (12:42)
4. Ernesto (6:33)
5. Never Mind (10:03)
6. Orange Flicker (5:25)
*all composed by Satoko Fujii (BMI)
田村 夏樹 (trumpet)
藤井 郷子 (piano)
井谷 享志 (drums except 6) (percussion on 2, 3) (vibraphone on 6)
2024年10月8日東京・渋谷、公園通りクラシックス(東京都渋谷区宇田川町)録音
レーベル:
Libra
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2025年5月9日発売予定
国内盤CD