★晩年に絶頂期を迎えた謎多きピアニストの肖像が浮かび上がる、本邦初のポール・ブレイ論
★20世紀音楽の一ジャンルとしてのジャズにおける最も革新的な、カナダを代表するピアニスト、ポール・ブレイ。一般的にはフリージャズの、あるいはドイツのECMレコードの美学を決定づけた音楽家として知られ、日本でも個別の作品単位では人気のあるブレイだが、これまでその魅力を解説する評論は皆無であり、本書が本邦初のポール・ブレイ論となる。
★「ポール・ブレイはモダンジャズの完成者である。その絶頂期は晩年に来ている」という仮説をもとに、ブレイの生涯を辿りながら、いくつかの象徴的な作品を分析し、ブルーズの観点からジャズおよび即興演奏の見直しを図り、そして常に傍らで共同作業をする女性たち、とりわけヴィデオ・アーティストのキャロル・ゴスとの関係において、「開かれた愛」の核心に迫る。ポール・ブレイの唯一無二の魅力とは何か——カナダ国立図書・文書館に所蔵されるポール・ブレイ関連資料の調査、およびキャロル・ゴスへの聞き取り(本書にはインタビューを収録)を通じて、晩年に絶頂期を迎えた謎多きピアニストの肖像が浮かび上がる。
▼目次
●はじめに
●第一章 沈黙の射程――『オープン、トゥ・ラヴ』&『アローン、アゲイン』から
ピアノ独奏の流行の中で
「一音一音」の音楽思想
同じ楽器などない、からの即興
スポンテニアス・スポンサー・レスポンス
●第二章 自己の確立――『フットルース!』へ
プロフィール
デビュー
ドラムレス――ジミー・ジュフリーと五〇年代西海岸
ピアノレス――オーネット・コールマンとの遭遇
カーラ・ブレイとの協働(ジャズの十月革命とその周辺)
●第三章 アイ・ガット・ザ・ブルーズ
ジャズなのにブルーズを
「クール」の誕生――ロバート・ジョンソン
突き詰められた定型こそ自由なり
去りがたきブルーズ
●第四章 他者との対面――『ダイアン』&『ホット』へ
電子の洗礼(一)――シンセサイザー
電子の洗礼(二)――ヴィデオアート
IAIの冒険、七〇年代的祝祭の中で
深化(一)――「歌」の解放
深化(二)――ブルーズ再び
●第五章 即興の時を求めて
即興論、繰り返し
二元論的即興観――時間
即興は作曲の現在であり、時空の現実たる人間である
●第六章 時間の中へ――『スウィート・タイム』&『ダブル・タイム』
二つの時間、二つの聴取
正当な評価の始まり――合衆国の外で
「ハーモニック・インプロヴァイジング」
故郷へ、旧友たちとの再会、還暦の「歌」
ファミリー・ヒストリー
優しい時、二重の時、知る時
●第七章 出身地モンレアルへ
一九三〇年代モンレアル(モントリオール)
たたき上げのマイノリティー
カナダ人ブレイ
絶頂の向こうへ
楽曲の音楽、自由自在
●あとがき
●注
●キャロル・ゴス、インタビュー
●ポール・ブレイ、目隠しテスト
●ディスコグラフィー
●索引
四六判上製:320頁
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2026年3月下旬 発売予定
書籍
★著者:昼間賢(ひるま・けん)
1971年埼玉県生まれ。東京理科大学教養教育研究院教授。音楽関連の主な仕事に、著書『ローカル・ミュージック――音楽の現地へ』(インスクリプト、2005年)、訳書アンドレ・シェフネル『始原のジャズ――アフロ・アメリカンの音響の考察』(みすず書房、2012年)、共訳フィリップ・ロベール『エクスペリメンタル・ミュージック――実験音楽ディスクガイド』(NTT出版、2009年)がある。