★依然多忙な大活躍の続く今日の日本ジャズ界最重要のトップ・ドラマー:石若駿(1992年北海道清里町生まれ)を実質的リーダーとし、人気個性派ギタリスト:市野元彦(1968年兵庫県神戸市生まれ)と、米ニューヨークで活動する日本生まれの女性ベーシスト:カノア・メンデンホール(ジョエル・ロス-vib・グループのレギュラーとしてそのBN近作に全面参加するなど第一線で精力的に活躍中)(あとアーロン・パークスやデイナ・スティーヴンスのサイドとかも)、の参画した連名トリオによる石若のオリジナル曲中心の一編。
★キレ味シャープでいて力強く脈動するように、或いは機微濃やかに呼吸するように色彩(&質感)変化に富んだ多層多角的轟鳴を見せるドラムの激動する猛襲に上手く煽られながら、潤いと旨味に溢れつつ突き刺さる鋭利さ〜エッジ感をも備えた輪郭太く鮮明な音色のギターが、安らいだ詩的ロマンティシズムやリラクゼーションと執拗に掻き鳴らされる烈しいアクション性を交錯させ、並行体現した、ちょっと物憂い躍動型メロディック・プレイをソリッドに紡いで、気魄も充分の中々分厚い魅力を放ち、フリーハンド・スケッチ風に絡んでくる情魂濃いウネウネ・ベースや変幻自在の大攻勢をかけるドラムらの瞬発力に満ちた立ち働きもあって、ほぼ全編生々しい三つ巴のインタープレイ交感を殊の外フレッシュ・スリリングに愉しませる高密度な敢闘内容。
★機略縦横にして一触即発の正三角形的やりとりがリアル・サスペンスフルかつグルーヴィーに緊迫感をもって展開してゆき、圧倒的ニュアンス豊かさで奔放苛烈に躙り寄る石若(ds)の押しの強い黒幕ぶり・ボスぶりも絶えず雄弁に大迫力で際立つ中、一座の花形役を担う市野(g)の、インタープレイ理念には根ざしているものの結構マイペースで自身のフェイヴァリット・メロディーを追求している感じもある、悠々堂々と構えたインプロヴィゼーションがコク深く豊作具合を見せて壮快だ。
→キレのある殺陣風のダイナミズムと牧歌的でおおらかな詩情や哀愁浪漫を同時に表すその、アメリカーナ系統辺りとはまた違ったフォーキー・ブルース色溢れる骨太で彫りの深い陰影に富むリリカル節が、ブレなく芯の据わった絶好調の冴えを、芳醇映えを示していて格別で、忙しなく全速力で走り廻る石若(ds)を横目に裕然と我が道を行く様(→この市野と石若の微妙な温度差〜ごく幽かな気分のズレが結果として全体の完成度を高めている感じもある)は風格と吟醸感一杯で実に魅惑的。
★軟体もしくは液体の如く隙間に入り込んでくるメンデンホール(b)のスピリチュアルな躍動もナイス・アクセントを成し、加えて、それまで自由即興度の高い妖しくトグロを巻くような起爆感孕む行き方だったのが、最後の2曲でガラリと趣を変え定形ビートで歌いに歌う(市野は多重録音でエレキとアコースティックの一人アンサンブルを聴かせる)寛ぎバピッシュ路線となって終わりを迎えるところも、爽やかな後味を残して◎。
01. Conversation And Confession
02. Mt.Teine
03. Arekara Ichinen
04. Sankanshion
05. Doodling
06. Lake Largo
07. April Fools
08. Room (Shouganai)
09. Natsuyasumi
10. 時計台の鐘
市野 元彦 Motohiko Ichino (electric guitar) (acoustic guitar ; overdubbed on 09, 10)
カノア・メンデンホール Kanoa Mendenhall (bass)
石若 駿 Shun Ishiwaka (drums, percussion)
2023年5月25日NK SOUND TOKYO(東京都新宿区四谷4丁目)録音
レーベル:
Days of Delight
在庫有り
国内制作CD