CATFISH RECORDS

★過去の2作が好評だった、ニューヨークでの活動を経て現在は日本へ戻り全国各地で精力的にライヴ活動を行なっている正統派モダン・ピアノの才媛：上野香織(1982年北九州市生まれ)の、サード・アルバムとなる本盤は、アルトサックス入りカルテットを基本とした地元・北九州でのライヴ編。

★輪郭もクッキリ鮮明な歯切れよく骨太い、重心のしっかり据わった硬質タッチのピアノが、バップ&ブルースの語法に則り小粋な歌謡フィーリングも加え、更に盛り上がってくるとやや線を細めた高音部の玉転がしっぽい音色を活かしてのアーシー節を唸って見せもする、という徹底して親しみやすいメロディック・スウィンギン・プレイを綴ってハートウォーミング&テイスティー・グルーヴィーに清々しい華を成し、一方、鋭い締まりや張りと柔らかな丸みを兼備したトーンで朗々と晴れやかかつ軽やかに美旋律を唄うアルトサックスの活躍も、爽快度満点にアジな彩りを添えた、全体を通じ明るく気さくそうなエンタテインメント性溢れる直球型のハード・バップ大会が続いて、ノリよくもホッと安心して愉しめる、旨味と真心に満ちた充実の好演内容。

★歌心とスイング感を何より大切にし、伝統的なブルース・フィーリングやバップ・スピリットも潤沢に備わった、ひたすら明快で取っ付きやすい人情味の宝庫、おおらかな開放感の泉たる娯楽活劇調のハード・バピッシュ奏演、が風通しもよさげに嬉々溌溂と展開され、潔いストレート勝負を貫いたスカッと胸のすく道程の中で、上野(p)やバートリー(as)のともに抜群のブルース・センスをナチュラルに有した吟醸感たっぷりのアドリブ奮戦が、何とも豊饒なる見せ場を創出して全くゴキゲンだ。

★上野(p)の、スマートなモード奏法とかを使うところもあるものの、どちらかと云えばその本性は純正ハード・バッパー気質の、即ち、ソリッド&スクエアーな殺陣風の鋭角的バップ・イディオム・プレイにR・ガーランドやピーターソン辺りを思わせるブロック・コードのファンキー・フレージングを豊富に織り混ぜてくる、ひたすら"粋渋"な分かりやすい旨口ワザにこそ揺るぎない真価が堂々発揮されていて痛快この上なく、かたやバートリー(as)の、ちょっとコルトレーン的なシーツ・オブ・サウンド型の激烈咆哮を炸裂させる場面もあるが、アウトラインとしては上野と底通する、つまり、どんな楽曲でも"イキでイナセなブルース小唄"にしてしまう風なそうしたダウン・トゥ・アース魂(或いはアンちゃんキャラ?)が中々コク深く絶好調の冴えを見せていて、これまた好もしい。加えて、随所に浮かび上がっては雄弁でスピリチュアルなこってり濃い味のメロディアス・ソロをカマすジャクソン(b)の追撃も上手いアクセント。

1. Sweet Pumpkin (Ronnell Bright) (p-b-ds trio)
2. My Little Sunshine (Kaori Ueno)
3. Too Damn Hot (Dr. Lonnie Smith)
4. Black Heart (Kaori Ueno)
5. Bolivia (Cedar Walton)
6. Hamabe no Uta (Tamezo Narita)

上野 香織 Kaori Ueno (piano)
パトリック・バートリー・ジュニア Patrick Bartley Jr. (alto saxophone except 1)
ノア・ジャクソン Noah Jackson (bass)
木村 紘 Hiro Kimura (drums on 1,2,3,4,5)
岡部 朋幸 Tomoyuki Okabe (drums on 6)

2022年11月14,15日北九州市音楽館Twilight(マックスオーディオ)でのライヴ録音

レーベル：自主製作

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