CATFISH RECORDS

●エストニアの人気ベテラン・ピアノのトリオ最新作。

★折り目正しく滑らかで端麗、かつキラキラした光沢感や潤いの備わった、安定性も抜群の美味しいタッチによる、朗々と爽やかに詩情を歌ったマイルド&ハートフルな牧歌的アクティヴ・バラード調や、渋味&ウィットを利かせてブルージー&スインギーに歯切れよく跳ね躍る燻し銀的バップ・アクション、など、起伏に富んだあくまでエンターテイニングなメロディアス・プレイが好調。

★メリハリ充分で和やかなリラックス・ムードが根底に保たれた、歌心溢れる小気味のいいリリカル奏演が続き、フォーク系ポップ・ソングのような美旋律性やロマンティシズムをイキイキと体現してゆく、ヨーロッパ抒情派らしい吟遊詩人風のスウィート路線があったかと思えば、「モーダル+ファンキー」的な筆致で鋭くダイナミックに突進するストレートアヘッド指向の熱演もあったりと、幅のあるドラマティックな道程が、主役ピアノの懐深く開放的スケール感あるおおらかな語り口の妙、で旨味たっぷりに展開され、飽きさせない。

1.Frank Mills
2.Rhythm-A-Ning
3.Along Came Betty
4.Yourself
5.Turning Point
6.Un Poco Loco
7.Little Waltz
8.The Sweetest Sounds
9.I Love You,Porgy

Tonu Naissoo(piano)
Taavo Remmel(bass)
Ahto Abner(drums)

2008年6月16日&17日エストニア-タリン録音

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デジパック仕様CD
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★ジャズで描く、極上のライト＆メロウ。北国から届いた、温かく、やわらかな贈り物。トヌー・ナイソーがあなたの秋を鮮やかに彩る。穏やかな陽の差し込む中、ゆったりとした歩みを楽しむような心地良さを感じる。

……これはキモチいいなあ。ミディアム・テンポのエイト・ビートに乗った、人なつっこいメロディからはじまるリラックスした演奏。そう言えばTõnuはどのアルバムにもこういうタイプのナンバーを選んでいるのだけれど、今回のオープナーとなった「Frank Mills」は殊に出色だ。ふぅわり、と浮き上がるような快感がある。良い曲を探してくるものだな、と思う。

キース・ジャレット・トリオがバーズ（作者はボブ・ディラン）のフォーク・ロック「My Back Pages」に目をつけ、世にも心地よい演奏を録音して40年、それに続く快挙(！)ではあるまいか。こころなし、装飾音の使い方も似ているような……。そして、キースのアルバム「Somewhere Before」がそのせいで人気盤となったように、本作も、ずばり、この一曲だけで「買い」にキマリだ。だって、絶対何度も聴きたくなるからね。

しかし、それだと身も蓋もないから、もう少しつけくわえよう。誰が演奏しても毒が抜け切らないようなモンクのTr.2とか、本来は張り詰めてしまいそうなパウエルのTr.6をこんなに滑らかに聞かせてしまう人が他にいたか？なんていうか、人の良さ丸出し、という気がするが、これもTõnuのキャラクターゆえかもしれない。

快適すぎて癖になる。まるでタバコのCMのようで恐縮だが、まさに味のある軽さとはコレだ。休日の朝によし、寛ぎの夜にもまたよく似合う。ピアノ・トリオによる極上のライト＆メロウ、あなたのカフェ・テーブルに常備されてはいかがだろうか？

Text by 北見 柊