声という名のインプロヴァイザー。北欧尖鋭たちとクローグの声が緊密に溶け合う、1970年の核心的ドキュメント。
★ノルウェーのジャズ・ヴォーカルの至宝、カーリン・クローグ(Karin Krog)が1970年に到達していた最も前衛的で果敢な音楽表現を捉えた貴重な発掘音源が、スカンディナヴィアのクリエイティブな音楽に光を当てる「Öppet」シリーズの第4弾としてLP化。
★1960年代を通じてジャズ・スタンダードの枠組みを拡張し、欧州独自の即興音楽へと舵を切っていたこの時期のクローグにとって、本作に記録された1970年はまさに表現の臨界点とも言える重要な時期。単に「歌伴」としてのバックバンドを従えるのではなく、自らの声をひとつの自律した即興表現として他の楽器と完全に同等に響かせる、先駆的なバイオグラフィカルな歩みがここに刻まれています。
【Side A & Side B (1-2):1970年5月 NDR Jazz Workshop】
北ドイツ放送のテレビ・プログラム「NDR Jazz Workshop」のために録音されたセッション(Side Aの2曲およびSide Bの1〜2曲目)には、当時の北欧新世代の尖鋭たちが集結。テリエ・リプダール(g)の先鋭的な空間感覚、ニルス=ヘニング・オルステッド・ペデルセン(b)の圧倒的ライヴ感に、カッレ・ノイマンとラース=ヨーラン・ウランデルの2本のアルトサックス/フルート、ステーン・オーベリ(ds)、そしてピアノとオルガンを駆使するベルント・エーゲルブラーダが加わり、独自の叙情と先鋭性を混在させたこの時代特有の不敵なラインナップが並びます。さらに本作では、クローグが声のみならずエレクトロニクスの手法をフィーチャーしている点にも注目。知的なテキストの解釈と、境界を拡張し合うようなダイナミックな交歓が、時に変調される声の響きと緊密に溶け合い、情感を秘めた冷徹な音響世界を構築しています。
【Side B (3-5):1970年12月 ピエール・ファーヴルとのデュオ】
アルバムの後半を締めくくるのは、同年冬にスイスの尖鋭パーカッション奏者、ピエール・ファーヴルと残した「Please 1〜3」の即興3連作です。ここでもクローグは自身の声や音響的な実験を試み、打楽器との極限まで削ぎ落とされた編成のなかで、互いの一瞬の呼吸をも読み合い、余白のなかに音を置いていくかのようなアプローチを展開。声の持つ微細な陰影と、ファーヴルの色彩豊かな打楽器の響きが交錯し、張り詰めた静寂のなかで、底知れない奥行きを持った深遠な音響空間を具現化しています。
★定型のヴォーカル・ジャズを超え、現代音楽やフリー・インプロヴィゼーションの世界へと鮮やかに跳躍した1970年のカーリン・クローグ。彼女の表現がさらなる深化を遂げていく活動歴の中で、最も果敢な変遷の足跡を刻んだ記録として注目したい録音です。
[Side A]
Arcticness(Berndt Egerbladh/Karin Krog)
Two Poems by Robert Creeley(Berndt Egerbladh/Robert Creeley)
[Side B]
Woodoo(Berndt Egerbladh/Karin Krog)
Blues Eyes(Berndt Egerbladh/Karin Krog)
Please 1(Pierre Favre/Karin Krog)*
Please 2(Pierre Favre/Karin Krog)*
Please 3(Pierre Favre/Karin Krog)*
■ Side A (1. 2.) & Side B (1. 2. "Woodoo", "Blues Eyes")
Recording: May 13-15, 1970 at NDR-Studio B, Hamburg
Karin Krog (voice, electronics) *electronics used on selected tracks
Lars-Göran Ulander (alto sax, flute)
Calle Neumann (alto sax, flute)
Berndt Egerbladh (piano, organ)
Terje Rypdal (electric guitar)
Niels-Henning Ørsted Pedersen (bass)
Sten Öberg (drums)
■ Side B (3. 4. 5. "Please 1", "Please 2", "Please 3")
Recording: December 10, 1970 at SWR, Baden-Baden
Karin Krog (voice, electronics) *electronics used on selected tracks
Pierre Favre (drums, percussion)
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