同世代アーティストとの活動から、独自の音楽を確立してきた大御所との演奏まで、日本のジャズ・シーンで、存在感を高めるピアニスト、永武幹子。 大学卒業から即、プロとして活躍してキャリアを積み上げ、今、月間のライヴ回数は、常に20回超。各地ライヴハウスでの人気と信頼と共に、日々の現場を糧とした活動は、ジャズという音楽の本質的なものとも結びついている。 そんな彼女が2025年、新たにリリースするのは再びのソロ。孤高のインプロヴァイザー、セシル・テイラーのトリビュートという注目作だ。一般的にフリー・ジャズとカテゴライズされる一方、独自の音楽的スケールももち、理論的な側面とインテリジェンスで音楽を構築しているテイラーの演奏に導かれて研究。千葉・柏Nardisでのスペシャル・ライヴが本作となった。 演奏の前半2曲はセシル・テイラーの作品収録曲から。1曲目は1973年の来日時に録音された『ソロ』の一曲。2曲目はCandid の初期名盤、『The World of Cecil Taylor』に収録されたスタンダード(ミュージカル)曲「This Nearly was Mine」。後半は、完全な即興演奏ながら、テイラーの演奏にインスパイアされたものとなっている。 セシル・テイラーへのリスペクトと共に、彼女が長年演奏してきたジャズの伝統的な美しいハーモニーが響く2曲目、瞬発力とスピード感をもって鋭角的なフレーズや打楽器的な演奏が繰り出される3曲目の展開、そのコントラストなども鮮やか。高い集中力から生み出される音楽は、聴くものを音楽の世界に引き付ける。 初リーダー作から4年あまり。次代を担うピアニストが新しい扉を開く一作品だ。