★過去の諸作がいずれも高い評価と確たる支持を得てきた、デンマークの人気中堅抒情派ピアニスト:サン・ビービー(またはセーレン・ベベもしくはゼーレン・ベベ?)(1975年デンマークのオーデンセ=Odense生まれ、オーフス=Aarhs王立音楽アカデミーを2004年に卒業)の、鉄壁のレギュラー・トリオによる、通算9作目の最新アルバムが登場。
★流麗潤滑でリキみを解いた軽みやまろやかさを感じさせると同時に歯切れよい鋭角性や硬質感を垣間見せるところもある、折り目正しく作法に適った印象のセンシビリティ溢れる透徹クリーン・タッチのピアノが、ある時はメディテイティヴ&イントロスペクティヴに内なる心象風景を徒然っぽくスケッチし、ある時はブルースの旨味を多分に絡めてリズミカル・グルーヴィーかつマイルド・メロディックに晴朗娯楽性全開で憂愁を唄い上げ、またある時はダウン・トゥ・アースな吟醸感を伴いつつゴスペル・フォーキー色豊かに牧歌世界を創出、更には切々とした哀愁浪漫ムード満点に耽美的なバラード節を綴ったりと、総じてヨーロピアンならではの薫り高い優雅さ・繊細さと美メロ・センスに貫かれたリリカル指向プレイをそぞろげに繰り出して、何ともフレッシュで胸に染み入る妙味を揮い、雄弁闊達なベースや機転ある敏捷ドラムのバックアップも的確にノリとスリルを高めた、全体を通じ深い詩情と芳醇な美味さ溢れる音景色を雅趣たっぷりに愉しませる爽快編。
★例によって、親しみやすい歌心の表出と浮遊性を孕んだフレキシブルでいて安定したスイング感の醸成、に先ずは主眼の置かれたユーロ系抒情派ピアノ・トリオの正統らしいメロウ&ロマネスクな行き方が推し進められるが、今回は過去の作品群と微妙に異なって、ビービーのピアノ・タッチが若干線細め・柔らかめになっていたり(従来通りに骨太で強堅なところも勿論あるが)、ビービー流のスピリチュアルな世界観が顕示されていたり、トータルなアウトラインは今日の欧州型だがディテールにはわりかしアメリカンなブルージー傾向やフォーキー傾向が認められるところもあったりと、中々新鮮味に富んだ道程の中で、1曲1曲は簡潔にまとめられつつビービー(p)のこれまでになく改めて意匠を凝らしたアドリブ奮戦が、テンポよくも初々しく味わえるという寸法だ。
→冒頭の2曲(曲順の異なるLP版ではA面の1曲目とB面の1曲目)では半ばインナートリップ風に心象の襞(ひだ)を掬い取ってゆく感じの一筆描きデッサンっぽいアプローチが試みられ、しかし決して難解になることなく"分かりやすい内省""分かりやすい瞑想"といったエンタテインメントから外れない芸風・文脈を保っている辺りのバランス感覚がさすがで、また3曲目以降(LP版ではA・B両面の2曲目以降)はブルースとフォークを基調としたおおらかな語り口がメインとなり、トラディッショナルなカントリー・ソング風があったりちょっと物悲しい北欧民謡タイプの歌性を露わにしたメランコリック路線もあったりと、そうした、内省型もフォーク・ブルース型も引っくるめてビービー一流のスピリチュアリティ〜情魂美学が濃く投影されているところに得難い新味がある。これは心機一転〜再起動気分の会心作。
1. Frostblad
2. Good Enough
3. Tystrup Sø
4. A Much Simpler Song
5. And So It Goes
6. Silent Listener
7. Chico
8. Throw It Away
9. Gratitude
Søren Bebe (piano)
Kasper Tagel (bass)
Knut Finsrud (drums)
2025年4月4日&5日デンマーク-コペンハーゲンのThe V-Recording録音
レーベル:
From Out Here Music
在庫有り
輸入盤・見開き紙ジャケット仕様CD
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