CATFISH RECORDS

★英国シーンで近年頭角を現してきている(アルバムも既に幾つか出している)女性歌手：サラ・ダウリングと、お馴染みスペインの人気ピアニスト：イグナシ・テラーサ(テラッツァ?)率いるトリオが組んだ(この4人はレギュラー・グループとして精力的にライヴ活動を行なっている模様)ヴォーカル・アルバム。

★軽妙小粋なファンキー・バップ・ピアノ以下、バック陣のダイナミック・スウィンギンなサポートにガッチリ支えられ、導かれて、トーン高めの爽涼な潤いや透明感に溢れ、同時にしなやかでシャープな張りやキレをも呈した鮮明クリーン・ヴォイスが、先ずは歌詞とメロディーを大切にして優しく語りかけるように洒脱なリリカル節を繰り出し、並行してリアル・ジャズ・ヴォーカルならではの勢いあるグルーヴ表現やブルージー・シャウトも随所にインサートしてくる、トータルとしてはテンダーでハートウォーミングながら背筋はピンと伸びておりダイナミズムにも事欠かない、硬軟兼備の基本は抒情指向なアクティヴ演唱をイキイキと綴って清新に華を成し、アーシーなピアノや中々自己主張の強い分厚めベースなど、インスト面の聴きどころも豊富に用意された、アウトライン的にはバピッシュな人情肌ジャズ・ヴォーカルの正統らしい、安定感と洒落たウィットある唱奏世界をノリよくスッキリと愉しませる会心打内容。

★バップ&ブルースのスピリットと明快平易な歌謡フィーリングが全体を支配する、わりかし昔ながらの安心して聴けるハートフル&スインギーな行き方がシンプルに一貫し、ダウリング(vo)の生鮮で結構イキのいい気魄のこもった朗々たる歌いっぷりに象徴される、ひたすらテンポよく歯切れよき道程がテラーサ(p)・トリオの手加減なしのハード・バピッシュ熱演とも相まって壮快に堪能できる寸法だ。

★ダウリング(vo)の、落ち着いた柔和でしっとりした面もあることはあるが、そういう寛ぎバラード的局面にあっても真意は劇的に躍動したくてウズウズしているといった印象の、即ちその本性は勇ましめのブルージー・フレージングとかスキャット〜ハミング系統の技法を使ってパワフルに立ち回るアクション肌のアプローチを最得意としていると思えるフシもあり、しかし本作ではそこを抑えて敢えてクール・ロマンティック寄りに振る舞っている辺りに絶妙のバランスよさ・聴きやすさが生まれていて、加えて、ダウリングは英国人だがルーツ的にはパレスチナとアイルランドの血を引いていることもあってか、ほんの時折エキゾティックな風情が顔を見せるところも殊の外瑞々しいユニークな個性に繋がっており得難き魅力がある。あと、テラーサ(p)の至ってド真っ当なファンキー・バッパーとしての理想の姿が捉えられている点でも大いに価値アリである。

01. I Hadn't Anyone Till You 3:33
02. Star Gazers 6:05
03. Time After Time 4:42
04. After You Who? 3:56
05. Bluebird Of Happiness 3:37
06. Isn't It A Pity 6:05
07. What A Little Moonlight Can Do 3:39
08. Se Todos Fossem Iguais A Voce 6:14
09. Devil May Care 4:43
10. This Is Always 4:20
11. That Old Feeling 4:13
12. I'm Lost 6:01 (vo & p duo)

Sara Dowling (vocal)
Ignasi Terraza (piano)
Dario Di Lecce (double bass except 12)
Esteve Pi (drums except 12)

2024年7月9日&10日スペイン-バルセロナのSol de Sants Studios録音

レーベル：Swit

在庫有り
輸入盤　紙ジャケット仕様CD