CATFISH RECORDS

★音に聞こえた(!)フリー派肌ブラック・スピリチュアル・テナーの最たる強者：アーチー・シェップ(1937年米フロリダ州フォートローダーデール生まれ)の、これは、敬愛するジョン・コルトレーンの死から凡そ3ヵ月後＝1967年10月21日、ラズウェル・ラッド(tb)、グレイシャン・モンカー(tb)、ジミー・ギャリソン(b)、ビーヴァー・ハリス(ds)とのクインテットを率いて(旧西?)ドイツのドナウエッシンゲン音楽祭に出演した折の、故コルトレーンに捧げられた大熱演が聴かれる傑作ライヴ・アルバム(原盤:SABA 15 148 ST)の久しぶりの再々々CD化。

★こってり味わい濃くスピリチュアルにウネり猛る重厚ベースの切迫感ある躍動に導かれて、ヘヴィーウェイトでありシャープ&タイトに引き締まってもいる隆々トーンのテナーが、適度にフリーキー音も織り交ぜながら切々とその情念めいたエモーションを吐露する風な執拗なる"雄叫び"を屈強に上げ続けて、乱調の中にもストロングなハード・ドライヴ感みなぎった勇猛でワイルドかつコク深い圧倒的気魄の華を成し、アブストラクトに唸るトロンボーン陣やパルス調から真っ向スイングまで自在に基底ビートを推移させてゆくドラム、らの変幻遊撃ぶりもフレッシュ&リアル・スリリングに彩りを加えた、全編スピリチュアル系フリー・ジャズの理想形たる硬派軒昂な完全燃焼の敢闘が続いて、問答無用にスカッと昂揚させ、感動させられる実に鮮やかな会心打内容。

★Pt.1では冒頭でギャリソン(b)のソロが一頻りフィーチュアされた後、シェップ(ts)がフロントに現れそこから先はほぼシェップの一人舞台的な妥協なく燃えに燃え盛る展開となって、有無を云わさずそのアナーキーな暴れぶりに大いに興奮させ、Pt.2では趣を違えてソロ・リレーがあったりハード・バピッシュな行き方が垣間見られたり中盤からは「The Shadow of Your Smile (いそしぎ)」を基本テーマに据えた道程となったりなど、一本調子に陥らぬメリハリの利いた進行構成で清新に愉しませるわけだが、そうした中でもやはりシェップ自身の気力もワザも充実しきった自由滑脱なインプロヴァイザーぶり&人情肌エンタテイナーぶりが殊の外傑出している。

→パワー・ミュージックの権化然と濃厚なスピリチュアリティを込めて野獣の如く吠えまくり徹底して暴れ倒すタフネス全開の異形ダイナミック・アクション咆哮に圧倒される反面、ブルースに深く根を下ろしたイナセな漆黒の歌いっぷりやバップ・スピリット溢れる渦巻くようなスウィンギン節、といったオーソドックス寄りのアプローチにもまた得難い旨味〜吟醸感があったりと、そのさりげなく周到に意匠が凝らされバランスのとれた、コワモテの内側に情味の覗く堂々たる吹鳴のあり様は芳醇至極で説得力絶大。

★これに果敢に立ち向かってゆくラッド(tb)やモンカー(tb)の奮戦も光る。オープニングを鮮麗に飾るギャリソン(b)も役得。一聴、豪放磊落(猪突猛進?)に突撃爆走・暴走しているようでいて何げに緻密に組み立てられてもいるさすが見事な、これは聴くべき逸編。

1. One for the Trane, Pt. 1 ワン・フォー・ザ・トレーン (パート1)
2. One for the Trane, Pt. 2 ワン・フォー・ザ・トレーン (パート2)

Archie Shepp アーチー・シェップ (tenor saxophone)
Roswell Rudd ラズウェル・ラッド (trombone)
Granchan Moncur III グレイシャン・モンカーIII (trombone)
Jimmy Garrison ジミー・ギャリソン (bass)
Beaver Harris ビーヴァー・ハリス (drums)
possibly someone of them (percussion?)

1967年10月21日(旧西?)ドイツ、ドナウエッシンゲンで催されたドナウエッシンゲン・ミュージック・フェスティヴァルでのライヴ録音

レーベル：Solid ウルトラ・ヴァイヴ(Ultra-Vybe) MPS

在庫有り
国内盤CD