★1970年代にスタン・ゲッツのサイドで一躍頭角を現し、チック・コリアやエヴァンス系統の奏法をベースとしつつ、構成力(とユニークな辛口のハーモニー・センス)に長けた理知的展開を見せる独自の硬質スタイルに斯界の定評を獲得、凡そ半世紀に渡ってSteepleChaseの看板スターを務め、理論派らしいシリアスな作家性を押し出した探究型の作風と単純明快な娯楽派筋の作風、を作品によってバランスよく使い分けた骨筋あるアルバム作りに根強い支持を得てきた、すっかり重鎮なモダン・ピアノの個性的ヴェテラン実力者:アンディ・ラヴァーン(1947年米ニューヨークシティ生まれ)の、今回はヴィブラフォンのヤング才媛:サーシャ・ベルリナーを登用したカルテットによる、このアルバムのためにラヴァーンが新たに書き下ろしたオリジナル曲集。
★打楽器性とメロディック感をバランスよく併有したヴィブラフォンが思索テイストも仄めかしつつクール&シリアスに鋭敏躍動し、熱情を孕みつつもリキまずレイドバックした自然体調子の半脱力的ダイナミック・アクションを紡ぐピアノのどこか醒めた感じの陰影あるビタースウィート・プレイも、ヴィブラフォンに上手くマッチすると同時にコントラストも加えた、全体としてはベース&ドラムの遊撃力充分のスリリングかつスウィンギンなサポートも図に当たって現代モード・ジャズの正統らしい苦味走ったちょっと涼しげなスマート・ダイナミズムの世界が軽やかに創出された、幾分かパステル・カラー=淡色系の趣ある「おとなの心」(または"分別"か?)を感じさせる余情豊かな快演内容。
★歌心とスイング感を尊重するが決して甘すぎず中々インテリジェントでややメディテイティヴなところもある、アクティヴな中にも一定の落ち着きを失わない躍動型抒情指向演奏が、敏活と恬淡の間を寄せては返し彷徨うように流麗に展開してゆき、雄弁なリッチモンド(b)や芸の細かいティーマン(ds)の堅実でいて機略縦横でもある活躍もフレッシュ・グルーヴィーに際立ち、彼らに巧く触発される恰好で、ラヴァーン(p)やベルリナー(バーリナー?)(vib)のアドリブ奮戦が結構ハードボイルドに見せ場を飾って実に颯爽としている。
★座長であるラヴァーン(p)は抜擢したベルリナー(vib)(1998年生まれの若手女性)に花を持たせる余裕を見せ、自身は力八分目以下の軽く漂うような淡々とした白昼夢の如き語り口に敢えてほぼ終始、ハンコックやマッコイの影響を感じさせるモーダルな行き方を示すが一貫して燃えることはなく、蒼白き鬼火を思わせる憂いに富んだ存在感でもってレイジー&デカダンなちょっとやみつきになりそうな独特の風情を放ち、一方のベルリナー(vib)はボビー・ハッチャーソンやゲイリー・バートン以降のモード・スタイルに特化した(ミルト・ジャクソン以前、即ちジャクソンやライオネル・ハンプトン、レッド・ノーヴォらの影響は殆ど感じられない)熱気を含むハッスルぶりでグループ全体に60年代新主流派っぽいムードを齎し、これが力の抜けきったラヴァーンとは好対照を成してまた絶妙の味だ。
01. Listen Hear
02. Tring Theory
03. Sounds Of Music
04. Crystal Night
05. Powerplay
06. Ennuendo
07. Doux Seize
08. A Ways Away
09. On To Something
10. Theia
Sasha Berliner サーシャ・ベルリナー (vibraphone)
Andy LaVerne アンディ・ラヴァーン (piano)
Mike Richmond マイク・リッチモンド (bass)
Jason Tiemann ジェイソン・ティーマン (drums)
2024年10月録音
レーベル:
SteepleChase
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輸入盤CD
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