★Step Back Traxからの自己名義アルバムや、スガダイローとのコラボ、先頃の市野元彦、津上研太、外山明とのユニット・プロジェクト(melodies)、等でエッジの利いた個性とワザを遺憾なく発揮してきた、台湾の進歩派ジャズを強力に牽引するテナー&ソプラノサックスの急先鋒:謝明諺=シェ・ミンイェン(Minyen Hsieh)(1981年台湾の台北生まれ)の、今回は、大友良英(g)、須川崇志(b)、山崎比呂志(ds,per)という日本随一のラジカル強者勢と組んだカルテットによる、渋谷・公園通りクラシックスでの怒涛のフリー即興ライヴ(東京の新生レーベル:"Point."の第1弾作品)。
★ヴィブラートを効かせて風のそよ吹きのように、或いは地鳴りのように吹き放たれる肉太テナーのアブストラクトかつスピリチュアルな咆哮が、怪しく不気味でいて独特の幻想ムード漂う中々テイスティー・グルーヴィーでもある堂々の花形ぶりを見せ、かと思えば尖った音色で絞り上げるが如く狂おしいさえずり・叫びを執拗に繰り出すソプラノの躍動もこれまたアジな魅力を発揮、といった具合で先ずはフロントに立つサックスが"スピリチュアル・ジャズ"の文脈でもって華々しく旨味豊かな見せ場を飾りきり、しかしながらこれにスリリングに絡んでくるギターはあくまでノイジーな奇音に徹したアプローチで空間をアナーキーに掻き回し、また弓弾きも効果的に用いながら情魂っぽさとカオスな実験性の間を烈しく往来するベースや、一定のグルーヴ感演出とけたたましい騒音型ノイズの体現を並行して行なうドラム&パーカッションらの働きも、ノリとシュール&ビザールさの醸成に大いに貢献した、全般に圧倒的サスペンスと歯応えそして美味さ溢れる濃密な充実内容。
★ザックリ捉えるなら、謝(ts,ss)を抜きにすれば大友(g)の轟音攻勢を中心としてヨーロッパ・フリーとかに通じる暗黒の地下実験色に満ちた硬質的インプロヴァイズド・ミュージックの世界が創出されているものの、中心主役の座に謝(ts,ss)が据わっていることで、その一貫してある種の情念を濃厚に孕んだ行き方が奏効、スピリチュアル路線の色合いが俄然高まってくる、という、全体を通じそうした情動型の側面と情感を排した実験傾向とが鬩ぎ合い拮抗し合う道程の中で、謝(ts,ss)を始めとする銘々の気合の入った迫真力みなぎるフリー・インプロヴィゼーションが生々しく満喫できる寸法だ。
★謝(ts,ss)の、似てはいないが中村誠一や坂田明辺りにどこか通じるところのある熱気を帯びたエモーショナル節が、結構コク深く芳醇なる妙味を全編で放っており、かたやそれとは対照的に破壊力満点の斬り裂くようなノイズ怪音をこれでもかとぶつけてくる大友(g)の暗躍も上手い激辛スパイス効果。
1. Punctum Visus #1 (9:19)
2. Punctum Visus #2 (4:32)
3. Punctum Visus #3 (2:49)
4. Punctum Visus #4 (14:42)
5. 視角 #1 (6:31)
6. 視角 #2 (15:32)
7. 視角 #3 (3:18)
8. 視角 #4 (4:32)
9. encore piece (13:33)
謝 明諺 Minyen Hsieh シェ・ミンイェン (tenor saxophone on 1, 4, 6, 8) (soprano saxophone on 2, 3, 5, 6)
大友 良英 Otomo Yoshihide (guitar)
須川 崇志 Takashi Sugawa (contrabass)
山崎 比呂志 Hiroshi Yamazaki (drums, percussion)
(*possibly someone of them plays bamboo flute on 4, 7, 8)
2024年6月25日東京・渋谷、公園通りクラシックス(東京都渋谷区宇田川町)でのライヴ録音
レーベル:
Point.
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