★米ニューヨーク・シーンで活動し、ジェイコブ・チョン(ts)やイリヤ・オサチュク(b)らの近作(あと、間もなくリリース予定の新進歌手キエラン・ブラウンの1stアルバムとか)に名を連ねていた若手ピアニスト:タイラー・ヘンダーソン(2001年米ニューヨーク州オニオンタまたはオネオンタ生まれ)の、ピアノ・トリオを率いた初リーダー・アルバム。曲はスタンダードとオリジナルが半々ずつ。
★力を抑えた流麗な滑りのよさと適度に角張りを持たせた固さやキレのよさ、が表裏一体化した、自然体の中に濃やかなニュアンスを感じさせる中々折り目正しい精細タッチのピアノが、煙霧の如きおぼろな陰影とクッキリした鮮明性を交錯させつつ、基本はあくまでアメリカ産・寛ぎブルージー小唄派の伝統を真っ当に汲んだ軽妙小粋なメロディック・スインギー・プレイを決してリキまぬ落ち着いた調子で綴って、洒脱で渋い余情に富んだ何とも風流この上なしの魅力を揮い、ベース&ドラムの手堅く安定感ある正攻法のサポートも的確にノリを高めた、全般に幾分かオールド・ファッションめの人情娯楽的バピッシュ快演が柔和な息遣いのもとに展開されて、ホッと一息つかせ、リラックスさせてくれる滋味深い好演内容。
★親しみやすい歌謡フィーリング〜メロディーの美と規則正しく律動し揺れ躍る乗りのよさ〜スイング感、を何より大切にした、音空間には絶えずインティメイトな打ち解けたムードや優しい温もりが充満する、ブルース・フィーリングも潤沢な明快シンプル・ストレートの極みを示したテンダネス溢れるリリカル・バップ妙演が軽やか&まろやかに、そして簡潔質素に進められ、トボックマン(b)&アレン=バーフィールド(ds)の何げに芸達者な気配りあるバックアップにガッチリ支えられ、触発されて、ヘンダーソン(p)の、大凡は脱力感を絶やさない独特の瀟洒味&ウィット漂うセンスのいい和みのアドリブ技が、スッキリとジェントルかつテイスティーに冴え渡って殊の外爽やかだ。
→ごく一部で繋ぎのてにをは的に、或いは転回として重厚にダイナミック・スウィンギンな突撃を見せる辺りで僅かにモード奏法も使うが、そこを除けばトータル的に見て殆どモード色は感じられず、似てはいないもののかつてのシアリングやブルーベックとかに通じるところのあるクールなリラクゼーション表現であったり、これも似てはいないがR・ガーランドやW・ケリーらのライトなファンキー奏法からアクを抜いてサラリとホワイト化した感じのアーシー・フレージングであったりの、白人特有の洗練された軽みある純正バップ流儀のブルース小唄的行き方にとりわけ瑞々しい真価が発揮されていて、これはニューヨークのジャズではあるが往年のウエストコーストの白人ジャズを彷彿とさせるイキでスマートな独自の趣があり、実に新鮮。
01. On A Clear Day
02. I'll Never Smile Again
03. West End Promenade
04. Hazel And Cedar
05. Get Out Of Town
06. Why Are You Not Here
07. The Good Life
08. Love Endures
09. In The Wee Small Hours Of The Morning (solo piano)
10. The Architect
Tyler Henderson (piano)
Caleb Tobocman (bass except 09)
Hank Allen-Barfield (drums except 09) (possibly percussion on 04, 10)
2024年11月9日カナダ-ブリティッシュ・コロンビア州ヴァンクーヴァーのWill &Norah's house録音
2025年カナダ作品
レーベル:
Cellar Music (Cellar Live)
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