★アメリカ進歩系メインストリーム・テナーサックスの大御所:ジョー・ロヴァーノ(1952年米オハイオ州クリーヴランド生まれ)と、ポーランドの人気個性派ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ(1975年ポーランドのスワヴノ生まれ)率いるトリオが組んだこの4人チームは、2019年録音の第1作「Arctic Riff」(2020年リリース/ECM)が好評を得ていたが、今回録音の上では4年ぶり、リリースは5年ぶりとなるコラボ作品・第2弾が登場。
★端麗優美で潤い豊かな滴が流れる如き精細ピアノ以下リズム・セクションの浮遊感仄めく鳴動に導かれて、ソフトな丸みを帯びたふくよかで折り目正しい、微妙に掠れてもいるニュアンスに富んだトーンのテナーが、脱力調子の自然体な流線形的リラクゼーション表現の内側からけだるさや物憂さも垣間見せ、またタロガトの活用も含め時折唸り慟哭するようなややフリーキーめの咆哮も織り交ぜる、トータルとしては「哀愁の歌心」にしっかり根ざしたメロディックだが甘すぎない、翳のあるビター・テイストの躍動型リリカル・プレイを滑脱に綴って中々懐の広そうな悠々たる魅力を放ち、一方、耽美性に長じると同時に強硬なダイナミズムやアブストラクト・センスも備わったピアノの粛然たる弾奏もピリッとした香辛アクセントを成した、全体を通じ現代モード・ジャズの一端ではあるものの、フリーとまでは行かぬ辛口スパイス感やこのレーベルならではのちょっと不思議な綱引きっぽいインタープレイ色〜トグロ巻きムードも加えられた、空間設計の奥深さに大いに魅了される独特の幽玄+風格漂うロマネスクな妙演内容。
★ECM特有のスペイシー&スローリーな、四者がじわりじわりと躙り寄り合うかのような愁き浪漫溢れるやりとりがテンダーそしてサスペンスフルに展開してゆき、ミシキエヴィチ(ds)やクルキエヴィチ(b)の殊の外芸の細かい、そして確固として"グルーヴィー"な匠のバックアップにノセられる恰好で、ロヴァーノ(ts)やヴォシレフスキ(p)の腰の据わったアドリブ技が典雅かつ雄々しく見せ場を飾って、アジな余韻を残す。
★ロヴァーノ(ts)の、大凡のところはロヴァーノ流・寛ぎテナーの奥義を探究する風な、結構柔和でメロウな感触を湛えつつレイジー・スモーキー&アンニュイに心象風景っぽくメランコリーを描き出してゆく、寛ぎテナーとは云ってもレスター系などとは全く違ってロヴァーノの独自スタイル(或いはECMスタイルか?)にカスタマイズされた、しかもブルースに深く根を下ろした端正な語り口がムーディーに冴え渡っており、アグレッシヴ面は専らタロガトで、スピリチュアル&メディテイティヴ面はゴングで発揮し上手くバランスをとった、その筆の進め様は、ゆとりと機智を絶やさず聴く者を優しく包み込んでくれるスケールの大きさ&温もりを多分に感じさせ、ヴォシレフスキ(p)のわりかしモーダル・ブルージーなストレートアヘッド体質面もアリの援護射撃と相まって、深山幽谷の趣顕著にしてポスト・バップらしいテイスティー・グルーヴィーさも十二分の、妙なる均衡に仕上げている辺りはやはりさすがだ。
1. ラヴ・イン・ザ・ガーデン Love In The Garden
2. ゴールデン・ホーン Golden Horn
3. オマージュ Homage
4. ギヴィング・サンクス Giving Thanks (solo tenor saxophone)
5. ディス・サイド - キャットヴィル This Catville
6. プロジェクション Projection (solo gong) (maybe solo cymbal?)
Joe Lovano ジョー・ロヴァーノ (tenor saxophone except 6) (tarogato on 2, 3) (gong on 2, 3, 6?)
Marcin Wasilewski マルチン・ヴォシレフスキ (piano except 4, 6)
Slawomir Kurkiewicz スワヴォミール・クルキエヴィチ (double bass except 4, 6)
Michal Miskiewicz ミハウ・ミシキエヴィチ (drums except 4, 6?)
2023年11月18日米ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのヴァン・ゲルダー・スタジオ録音
レーベル:
Universal Music Japan ECM
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国内盤SHM-CD