★一段と熟味&威風を増してきた現代正統派ハード・バップ・テナーの横綱スター:エリック・アレクサンダー(1968年米イリノイ州ゲイルズバーグ生まれ)の、今回は、馴染みのマイク・ルドン(p)をフィーチュアしシカゴのリズム・セクション2人を迎えたワンホーン・カルテットによる真っ向勝負の一編。
★アーシーとモーダルの間を自在に往来する結構饒舌なピアノや、鋭く空を斬り刻み同時に体当たりっぽく分厚いアタックをカマしてくるドラム、落ち着いた調子でおぼろに唸りを上げ精確に律動ドライヴするベース、らに頼もしくプッシュされながら、リキみなくゆったり伸び伸びと構えた息遣いでハード・ドライヴィングとソフト・リラクシングを表裏一体化させたような渦巻きブロウを繰り出すテナーが、泰然自若の安定感と風格ある華を堂々と成し、かと思えばより甲高く尖った音色のソプラノがエネルギッシュに攻勢をかけてきて熱く昂揚させもする、といった具合で現代流硬派旨口ハード・バップの正統らしいメリハリある奮戦が続いて、しっかりテイスティー・グルーヴィーに愉しませる快演内容。
★歌心とスイング感に変らず重心を置いた雄々しく渋味あるブルージー・バピッシュ演奏が、ひたすら骨太く揺るぎなげに展開してゆき、冒頭ではアレクサンダーがいきなり2曲連続でソプラノを吹き強気に攻めたところを見せるが、それも含めて今作ではアレクサンダーの巧まぬ"自然体"の魅力をクローズアップした、とでも云えそうな、得意とする幾つかの引き出しを悠々と披露してさすが1ミリもブレない絶好調の円熟ぶりがおのずと顕示されるところに醍醐味アリ、の至って真っ当な行き方が貫かれてゴキゲンな豊饒世界を創出している。
★3曲目以降のテナーを吹くトラック群では、概ね力は八分目ぐらいでしなやかな伸張力を示しつつ抵抗なく波に乗るような流線形っぽい吹奏スタイルを頻用、そうした中に、しかしリラクゼーションと同時に力強いダイナミズムやハードなドライヴ感も見て取れ、そのごくナチュラルなバランスのとり様にはさりげない醸造性と練達が滲んでいて秀逸(大方、出だしはけっこうモードっぽくてそういう熱めの路線かと思わせるが、いつしかそれが丸みを帯びた純正ハード・バップ調のマイルド・テンダーな行き方に様変りしている、というのが基本パターン)。
★加えてブルース・ナンバーの#5とかではホンカーとまでは行かないもののわりかし泥臭いダウン・トゥ・アースな漆黒のソウル・フィーリングを露わにして泣きの吟醸節を堪能させ、またソプラノを吹く2曲では演目の上でももろにコルトレーンだがコルトレーンとは微妙に異なった筆致で、エッジを効かせてシャープにえぐり込んでくるアグレッシヴなアプローチに新味を見せたりと、アルバム全体が現在進行形の「エリック・アレクサンダー・カタログ」風の中身になっている辺りに豊かな興趣と美味しさがある。エネルギッシュ&パッショネートにモード色濃く疾駆驀進したかと思えば軽妙小粋に寛ぎファンキー節も唄うルドン(p)の活躍もナイス・アクセント。
1. Afro Blue
2. Wise One
3. This Is Always
4. Only The Lonely (ts-b-ds trio)
5. Hittin' The Jug
6. The Lamp Is Low
7. Angel Eyes
Eric Alexander (tenor saxophone on 3, 4, 5, 6, 7) (soprano saxophone on 1, 2)
Mike LeDonne (piano except 4)
Dennis Carroll (double bass)
George Fludas (drums)
2024年5月7日 米ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのVan Gelder Studios録音
2024-2025年カナダ作品
レーベル:
Cellar Music (Cellar Live)
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輸入盤・見開き紙ジャケット仕様CD