CATFISH RECORDS

★クラシック(大阪音大で赤松二郎に師事)からジャズに転向して(土岐英史や多田誠司に師事)首都圏シーンで精力的な活動を続けているモダン・アルトサックスの才媛：守谷美由貴(1976年生まれ、香川県出身)の、通算4作目のリーダー・アルバムとなる本盤は、レギュラー・カルテットにテナーの重鎮:峰厚介を加えつつ(峰は5曲に参加)の一編。

★キュッと鋭く絞りが利いていて甲高く叫ぶようでもある中々の隆々トーンのアルトが、バップ&モードの伝統的イディオムに則りつつブルース・フレイヴァーも豊富に加えたリリカル・アクション・タイプのビタースウィートなメロディック・プレイを敏活に繰り出して、或いは結構固く張りとキレある音色のソプラノによるアーシーなブルース・テイスト濃い唸り節を綴って、精悍で凛々しい華を成し(その一方、流れるようにマイルド・スムースで滑脱瀟洒なアルトによる寛ぎ吹奏の柔和さ・軽みがまた格別でもある)、より骨太肉厚でハード・ドライヴ感みなぎったテナーの渦巻き咆哮も雄渾たる妙味を発散、またソリッド&スクエアーな堅牢ワザを粛々と紡ぐピアノも上手く引き締め役を担った、全体を通じ今日流ハード・バップの正統らしい真っ向勝負の快演が続いて、スッキリと清々しく昂揚させてくれる会心打内容。

★硬派で勇ましくも親しみやすい人情味に溢れた、歌心とスイング感を何より大切にする至って真っ当な躍動型抒情指向演奏が、一定の硬質感をもってイキイキと展開され、リズム・セクションの安定律動力と縦横無尽のゲリラ性を併せ持った機動的サポートに巧く刺激されながら、守谷(as)や峰(ts)の腰を据えて伸びやかに宙を舞うアドリブ活躍が、実に豊饒なる盛り上がりを呈してゴキゲンだ。

★守谷(as)の、序盤こそシャープでキンキンした音響を活かした意気軒昂そうな立ち回りで歯切れよくノセるものの、聴き進むにつれその本領はそれよりもむしろボッサ調や寛ぎバラードなどで聴かれるワンポイントの脱力感を保った半ばレスター系のアルト化、っぽいまろやかで和んだメロウ・テンダーなレイドバック調の流線形的美旋律節(更にはキャノンボール寄りの軽妙小粋で幾分ソフトなファンキー・フレージングとか)、もしくはソプラノによる軽快なグルーヴ満点のファンク・スタイル・ブロウ(#5)、辺りにこそ遺憾なく発揮されている感もあって、そうした何げに幅のある吹鳴のあり様そして結構こなれたストーリーテラー肌の芸風には、誠に豊かな旨味と確たる説得力がしっかり認められ、一方峰(ts)の、"ゲスト・ソロイスト"たる立ち位置をとことん愉しんでいる風な豪快でダイナミズム&タフネス満点の逞しき吠えっぷりも頼もしさ+コク深さ格別、加えて石田(p)のハード&ストイックに抑えの効いた鋭角的弾奏で道程に締まりと弾みを齎すキレのいい助演も見事にツボにハマッていたりと、音空間は色彩感に富んださりげなく高密度な充実の仕上がり。

1. Cicada's Blues (ss-p-b-ds quartet)
2. Flip A Coin
3. 父母ヶ浜
4. Melancholy Marie (as-p-b-ds quartet)
5. Maverick
6. Beyond The Sea
7. After The Checkout (as-ts-p trio)
8. PAPA Julian (as-p-b-ds quartet)
9. After Dark (as-p-b-ds quartet)

守谷 美由貴 (alto saxophone except 1, 5) (soprano saxophone on 1, 5)
峰 厚介 (tenor saxophone on 2, 3, 5, 6, 7)
石田 衛 (piano)
佐藤 潤一 (bass except 2, 5, 6, 7) (electric bass on 2, 5, 6)
今泉 総之輔 (drums except 7)

2023年8月21,22日Pastoral Sound(東京都世田谷区奥沢)録音

レーベル：Coume Music

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