CATFISH RECORDS

★米バークリー音大に学び、仏パリに本拠を置いて活動しているオーストラリア出身の女性歌手(アルトサックス奏者でもある)兼ソングライター：ジョディ・スタンバーグの、本盤は、フランスを代表する重鎮ピアノ：アラン・ジャン=マリー(1945〜)とのデュオによる一編。

★キレのよさと潤いや滑らかさを併せ持った鮮明タッチ・ピアノのきめ細かくも敏活にノる骨太いリリカル・プレイに導かれて、しなやかな張りや伸びを呈した凛々しい側面とあどけなく無邪気につぶやく風な可憐で愛らしい側面を併せ持つ、中高音の半ハスキーなクール・ヴォイスが、先ずは何より歌詞とメロディーを大切にして一語一句・一声一声を丁寧に発し、優しくメロウに物語を読み聴かせるような、それでいて並行して随所にダイナミックな突破的小グルーヴィー・フレーズを差し入れたりその根底にはごく自然に伝統的ブルース・フィーリングが確固と脈打っていたり、などのジャズ・ヴォーカルならではの吟醸感も加えられ、トータルとしてはデリカシーや詩情、テンダネスが勝った柔和なリリカル体質イメージの演唱を中々折り目正しく丹念に綴って、瑞々しくも行間深く包容力ある魅力を泰然と放った、さりげなく練達さを感じさせる好演内容。

★ジャン=マリー(p)の骨芯に一切ブレるところのない気合の入ったロマネスク・バップ弾奏の雅趣豊かさ・渋〜い含蓄っぽさがとりあえずはさすが出色で、ヴォーカルと切り離してこれだけでも圧倒的な旨味と聴き応えがあるが、そうした醸熟至芸に一歩も引けをとらず堂々と渡り合って見せるスタンバーグ(vo)の眩く煌めくスター性ならびにストーリーテリングの卓抜さもバッチリ際立って、色彩コントラストやメリハリ充分のシーソー的道程がドラマティックに創出されており、全体を通じインティメイトな和気や寛ぎを底流させた中に鋭く強固な硬派バップらしさも漂うバランス絶妙の行き方が続く中で、スタンバーグ(vo)の、背筋は伸びているが肩の力は自ずと抜けている、巧みなげなマイペースっぽい滑脱な歌い回し＝語り口の粋が清新に、そして軽々と冴え渡っていて素晴らしい。

→基本は白人系抒情派ジャズ・ヴォーカルの伝統をしっかり汲んだ、言葉を重んじ詩の情緒や旋律の美しさを一つ一つ慈しむかの如き濃やかに誠心こもったマイルドでキュート&プリティーな筆致を根幹として大いに、ムーディーに和ませるが、ジャン=マリー(p)の重厚でシャープなメランコリック節に呼応するかのような、独特の深い物悲しさや寂寥感を滲ませたシャンソン寄りの哀愁描写〜物語的表現に得難い機微を見せるところもあるなど、結構懐は広く興趣は多彩だ。

1. Castles In The Sand
2. One Never Knows, Does One?
3. For Every Man There's A Woman
4. I Will Wait For You [Je Ne Pourrai Jamais Vivre Sans Toi]
5. What Can Be Done?
6. Her Tears
7. Moon, Don't Come Up Tonight
8. Comme Le Temps Passe [As Time Goes By]
9. Suicide Is Painless – Theme From M.A.S.H.

Jody Sternberg (vocal)
Alain Jean-Marie (piano)

2023年フランス作品

レーベル：Bonsaï Music

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デジパック仕様CD