CATFISH RECORDS

★伊藤君子、中本マリに師事し、地元の佐賀や福岡のライヴ・シーンで活躍、2011年にリーダー作「When You're Smiling」を発表して好評を得ていた本格派ジャズ・ヴォーカルの実力者：大島麻池子(佐賀市在住)の、今回は小コンボ体制でのスタンダードなバラード・ナンバーをメイン・レパートリーとした一編。

★重心のしっかり据わったトーン低めの程好い厚みある、加えて一声一声から渋い旨味が放たれるかのような、微妙にしゃがれ感も仄めく温もりと潤いに満ちた"アジな"声質による、歌詞とメロディーをひとつひとつ丹念に慈しむが如き優しくハートフルな、なおかつジャズ・ヴォーカルならではのバピッシュなグルーヴやブルース由来の吟醸っぽさも自ずと備わったきめの細かいリリカル演唱が、テンダーで瀟洒そして感動的な結構泰然たる華を成し、ファンキーなピアノやソリッド&ドライなキレのあるトランペット、クール・メロウなギターなど、バック陣のモダン・ジャズの王道を突き進む手加減抜きの敢闘もこってり濃い口の魅力を際立たせた、全体を通じ気さくそうな人情味やウォームネスと幾分ドレッシーな正装感がバランスよく融け合った歌の世界に、心地よく浸らせてくれる滋味深き好演内容。

★インティメイトな和みのムードが変らず底流し、ハード・バップ然たる鋭利敏活なダイナミック・スイング感もバッチリ有した、歯切れよくも親しみやすく心温まるリリカル指向の洒脱な行き方が続き、手堅くも表情豊かにバッパーの本領を見せる高橋(p)や、仄暗くも涼しげでまろやかな憂愁的情緒を映す伊豫(g)、華のあるピュッと一吹きで現れるや好もしく座をさらうもう一人の主役とも云うべき山本(tp)、らインスト勢のエッセンスを凝縮したような劇的立ち働きもしっかり美味しく鮮度抜群に煌めく、色彩感とメリハリ充分な道程の中で、大島(vo)の、揺るぎなく堂々と落ち着いた安定感と包容力溢れる歌い回しが何ともテイスティーに冴え渡って素晴らしい。

→バラード集ということもあって何より旋律美と詩情を重んじる「言霊派」の小粋でハートウォーミングなロマンティック・スタイルにほぼ徹しており、その柔和で穏やかなマイルドめ・ソフトめの風合いの内側からブルージーなコクや十全に醸造されたバップ・スピリットが巧まず滲み出てくる、辺りのナチュラルな"熟度"や中々の威風ある場慣れっぽさが実に芳醇でイカした妙味を成し、トータルなアウトラインとしては温厚で懐の広い母性を感じさせるホッと安心の歌声キャラが確固とブレなく打ち樹てられていて、説得力も十二分。

01. Unforgettable (vo/tp/p/b/ds)
02. The Shadow Of Your Smile (vo/tp/p/b/ds)
03. The Nearness Of You (vo/p/b/ds)
04. Black Coffee (vo/tp/p/b/ds)
05. It's Been Along Long Time (vo/tp/g/b/ds)
06. Love Letters (vo/tp/p/b/ds)
07. My Foolish Heart (vo/p/b/ds)
08. Willow Weep For Me (vo/tp/g/p/b/ds)
09. Hush-A-Bye (vo/g/b/ds)
10. Moon River (vo & ac-g duo)

大島 麻池子 (vocal)
山本 ヤマ (trumpet except 03,07,09,10)
伊豫 洋明 (guitar on 05,08,09,10)
高橋 聡 (piano except 05,09,10)
丹羽 肇 (bass except 10)
中村 健 (drums except 10)

2023年日本作品

レーベル：Studio Prestige

在庫有り
国内制作CD

大島 麻池子
佐賀市在住。50歳の時に新聞社のカルチャースクールにて原田広子氏に師事し始めてジャズに出会う。その後、伊藤君子、中本マリに師事し、博多の老舗ジャズスポット「リバーサイド」で川上トリオの専属ヴォーカルとして8年間出演。久留米のジャズ喫茶「ルーレット」のハウスヴォーカルも務め、佐賀、福岡を中心にライブやイベントで活躍する。2011年オリジナル曲を含む「When you're smiling」を発表。2015年、第6回宇土ジャズミートに入賞。佐藤允彦、鈴木良雄、小林陽一&J.JM等数多くのミュージシャンと共演する。2018年渡米、ニューヨークでライブ・セッション等に出演した。癒しの歌声と軽妙なトークで聴衆を魅了する。