CATFISH RECORDS

★クラシック・ピアノの修練を積んだ(少年期より神童として名を馳せる)後、洗足学園短期大学JAZZ科に入学(22才時)し、ジャズ・ピアノを学び今泉正明に師事、田中洋一(tp)との双頭バンド:"KIBATANABAND"を始め関西や東京で幅広く活動し、日野皓正、エディ・ヘンダーソン、ルイス・ナッシュ、ピーター・ワシントン、ケニー・ワシントンらのビッグネーム達と共演、ジャズ、クラシック、ブラジル音楽を融合した芸風に独自の新味を発揮する個性的な中堅ピアニスト：木畑晴哉(1974年生まれ、兵庫県宝塚市在住)の、前作から10年ぶりとなるサード・アルバムが登場。編成はベース＆ドラムとのトリオ。

★歯切れよさと滑らかさを自然に併せ持った、程好い厚みの陰影豊かなストーン・タッチ・ピアノが、ガキゴキした硬質骨太な凹凸ダイナミズム表現を基底に敷き、よりまろやかでロマンティックなきめの細かい哀愁フレージングも匙加減絶妙に盛り込んで、トータルとしてはメロディアスではあるが決して甘すぎないビタースウィートな味わいの躍動的リリカル・プレイを敏活に、そして精悍げに紡いで凛々しくも憂い漂う中々颯爽とした華を成し、一方、安定律動と並行してゲリラティックな遊撃もカマしてくる多角攻勢型のドラムや、撥ねよくウネるも堅固なグルーヴ提供にほぼ徹する控えめで温もりあるベース、らの助演もそれぞれ的確にハマるべき処へハマりきった、全般にオーソドックスなアクティヴ抒情派の行き方を主軸としつつも時折そこから逸脱して意表を衝くユニークな個性も適宜発揮される、新鮮味充分の敢闘内容。

★モーダル・バップ・ジャズならではの硬派で力強いキレのあるノリ具合〜スイング感や雄大なスケール加えて力学性と、小粋でセンスのいい歌心＝メロディー・センスの発露、を変らずキモ・根幹とした、剛柔兼備のメリハリある情緒型・立ち回り型グルーヴィー快演が一定の重みをもって意気軒昂に展開してゆき、賑々しくワシワシと猛襲してくる森下(ds)のアツい奮戦も好アクセントもしくは目覚ましスパイス効果を成す、スリルと迫真味満点の道程の中で、主役:木畑(p)の、正攻法と変化球を上手く使い分け、構成力にも長じたアドリブ技〜語り口の妙がブレのない確固とした冴えを見せて秀逸だ。

→先ずはモード・ピアノのベーシック・スタイルに則った殺陣風の鋭角的ダイナミック・アクション、並びにエヴァンス以降のモード系リリカル派の典型たる機動的ロマンティシズム表現、それとファンキー・タイプの軽涼感ある洒脱なコードワーク、以上を語法の基本としてスタンダードな歌物等では至って安心堅実なる、しかも甘さに流されない制御の効いた半劇的文脈を形作って詩情とグルーヴ溢れる世界を美味さ&歯応え十二分に愉しませるが、反面、オリジナル曲の一部では、似てはいないもののピエラヌンツィ辺りに底通する濃いめに翳った瞑想的・内省的アプローチを鋭く繰り出してシリアスなニガみを強化して見せたり、ブラジリアン様式に由来した奥深くも浮遊感あるサウダージ醸成に独自の妙味を揮ったりと、ハード・バップ・ピアノの枠に必ずしもとどまらない(但し基本はあくまで正統派)その芸風、弾鳴のあり様には清新さ・驚きも絶えず大いに魅惑的。

01. Petrichor (Haruya Kibata)
02. Stranger In Paradise (Bob Wright / George Forrest)
03. ジョバンニ (Haruya Kibata)
04. Interlude (Haruya Kibata) (solo piano)
05. Once I Loved [O Amor Em Paz] (Tom Jobim)
06. My Ship (Kurt Weill)
07. Jackmanii (Haruya Kibata)
08. The Journey Of The Jellyfish (Haruya Kibata)
09. Elegy (Haruya Kibata)
10. I'll Be Seeing You (Sammy Fain)
11. Beau Soir (Claude Debussy)

木畑 晴哉 (piano)
萬 恭隆 (bass except 04)
森下 啓 (drums except 04)

2021年日本作品

レーベル：タイムマシンレコード (Time Machine record)

在庫有り
国内制作デジパック仕様CD