CATFISH RECORDS

★東京と名古屋を行き来しつつ多方面で活躍、リーダー・アルバムも2018年以来着々と発表してきたマルチ・キーボーディスト：渡辺翔太(1988年愛知県名古屋市生まれ)と、Apollo Soundsよりの次々人選を違えてのトリオ連作に高い評価を得てきた多忙なオールラウンド・ベーシスト：マーティ・ホロベック(オーストラリア、南オーストラリア州アデレード出身)、という気鋭の二人がともにアコースティックに専念したデュオ・アルバム。演目は渡辺のオリジナル8曲とホロベックのオリジナル2曲。

★折り目正しく精緻で端正な、骨芯もしっかり据わった繊細タッチのピアノが、優しくも歯切れよくダイナミックに哀歓やグルーヴ或いはリラクゼーションを映し出す、丁寧であり勢いもあるメロディック・プレイを滑脱に綴って清々しくも結構コク旨な魅力を放ち、一方、骨太肉厚なズッシリしたサウンドでしかし極めて鋭敏に斬り込んでくるようなドライヴ感溢れる躍動を見せ、その一音一音が聴く者の感覚をヘヴィーに震動させるベースの唸るが如き鳴り様も、濃い口の味・彩りを頼もしげに添えた、全体を通じウォームな寛ぎと快活溌溂なキレのいい律動感とがバランスよく共存する、何げに密度の高い好演内容。

★インティメイトな和み気分と敏活なノリのよさを変らず堅持しての、歌心並びにスイング感を大切にしたリラクシング・グルーヴィーな落ち着きある抒情派演奏、がさりげないコンビネーションの緊密さを光らせつつ小気味よくも丹念に紡がれてゆき、ホロベック(b)のバネとウネりを強烈に効かせた力強く波打つような大立ち回りも、雄々しくスケールのデカいグルーヴや芳醇なるスピリチュアリティを堂々体現して確固たる太い存在感を揮い続ける中、渡辺(p)の、作曲面での多彩な独創性にも煌めくものを感じさせながらの、基本はコンテンポラリー・リリカル・ピアノの正統らしい美メロに富んだ温厚さと闊達さ混合のアドリブ妙技が、瑞々しくもテイスティーに冴え渡って快調だ。

→ビル・エヴァンス、チック・コリア、キース・ジャレットらの成果を十全に踏まえた上での機動性あるアクション型のロマンティック・フレージング、にフレッシュな妙味を発揮する他、作曲センスと連動して立ち現れる独特の思索瞑想性を仄めかしつつのちょっと諦念めいた親しみやすいマイルド・リラックス節や、「ブルース」の本質に迫りじっくりと地の底へ降りてゆくようなダウン・トゥ・アースな吟醸的アプローチ、といった辺りにも揺るぎない説得力・濃さが感じられ、どんなに激しくスピーディーな立ち回り場面にあっても一定の余裕や節度を失うことのない、穏やかさを身上とした弾鳴キャラのあり様は好感度も抜群。ホロベックのオリジナル2曲の醸し出す、そうそう安心していられないスリリング&サスペンスフルな風情も上手いスパイス・アクセント。

01. Changes
02. Kiki Feels Lonely
03. KeiAi (M. Holoubek)
04. 瞬間 / Shunkan
05. Song For The Sun
06. Mono
07. Hope
08. Giant Armadillo's Hide Out
09. B Shouga (M. Holoubek)
10. Speak With Courage, An Angel Comes To Your Heart
＊all compositions written by Shota Watanabe except #03, #09 by Marty Holoubek

渡辺 翔太 Shota Watanabe (piano)
マーティ・ホロベック Marty Holoubek (bass)

2021年11月16日東京 Miyazaki Piano Studio録音

レーベル：Days of Delight

在庫有り
国内制作CD