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ホーム2022年4月REVIEWアンニュイ&メランコリックなヨーロッパならではの翳ある耽美的ロマネスク・ピアノ弾奏に饒舌な重厚ベースやゲリラティックな猛襲ドラムも生々しく絡む抒情派インタープレイの会心打! CD TRIO VIRET + トリオ・ヴィレ・オーグメンテッド / IN VIVO イン・ヴィヴォ
商品詳細
★Sketchや澤野、Munium Music、Mélisseよりの作品群がいずれも高い評価を得ていた、フランス・シーンで幅広く活躍するヴェテラン個性派ベーシスト:ジャン=フィリップ・ヴィレ(1959年フランスのサン=カンタン生まれ)の、今回は、これまで率いてきた2つのピアノ・トリオ(ピアノはどちらもエドゥアール・フェルレで、ドラムはアントゥワーヌ・バンヴィーユとファブリス・モロー)それぞれ個別の演奏と、その2つを合体させた、即ちツイン・ドラムのカルテット演奏、という3フォーマットの快演が聴かれる入魂作。

★端正でクールな精巧タッチのピアノが、深い憂愁を多分に含ませつつ中々ダイナミック&パッショネートに動きの烈しいリリカル・プレイをキビキビ繰り出して颯爽と華を成し、一方、強力にバネとウネりを利かせて太く重くドライヴする分厚いベースの轟鳴や、キレ味シャープできめ濃やかな、シャキシャキと空を切り刻んでゆくドラム(またはツイン・ドラムの場合はけたたましいほどの賑々しさでドシャバシャと猛襲してくるゲリラ攻勢)、らもしっかり濃く確固たる旨口の存在感を頼もしげに揮いきった、全編スリリング&サスペンスフルな三つ巴(または四つ巴)インタープレイの緊迫感に溢れながらヨーロピアンならではの潤沢な耽美性や浪漫をもたっぷりと満喫させてくれる、極めて密度の高い敢闘内容。

★メロディーの端麗さや詩的な情緒性を何より重んじ、かつ自由に宙を遊泳しゆったりトグロを巻くようなリアル・インタープレイ・タイプのスペイシーさや浮遊感覚も絶えず匂わせる、欧州流現代抒情派ピアノ・トリオの一典型を示した典雅でロマネスクそしてミステリアスな妖しさ仄めく、瑞々しい躍動的行き方が続き、バラードからファンクまで刻々多彩に形状を違えてゆく基底ビート演出のドラマティックなヴァリエーション展開にも新鮮に驚かせながら、一座の花形役を担うフェルレ(p)のエレガントにして瞬発力抜群のアクティヴなアドリブ奮戦が清新なる煌めきを放ち、と同時に隙あらば主役の座を奪取せんとばかりに饒舌な追い上げ様を見せるヴィレ(b)の力強い黒幕オーラの発散ぶりも上手く奏効して、決して気の抜けない生々しいフレッシュネス満点の道程が創出されており、見事。

★フェルレ(p)の、アンニュイでメランコリックな物悲しさや寂寥感を湛えた誠に美しいポエティック・フレーズを紡ぐも、甘さに流されることなくクール・ビターな制御力が自然と効いたその、ある時は夢幻的・瞑想的な心象風景の中をゆらゆらと彷徨ってゆくような深遠なる哀愁描写であったり、またある時はちょっとハードボイルド調にキリッと凛々しく苦味走った速攻アクションであったりと、さりげなく引き出しの多い懐も広そうなストーリーテリングの妙が何とも鮮麗に冴え渡っており、かたやヴィレ(b)の、温かな包容力と雄弁な歌謡センスをフル発揮してタフ&パワフルに迫ってくる仕切り屋ぶりも卓抜。

★手数の多い剃刀的斬り刻みワザに本領を見せるバンヴィーユ(ds)と、摺り足でジワリジワリと躙り寄ってくるようなサスペンス・アタックに無双の妙味を揮うモロー(ds)、のドラム対比も興趣豊か。

01. Dérives (+)
02. Madame Loire (*1)
03. 3 Joursde Trêve (*2)
04. Pour El Ho (+)
05. Iode131 (*2)
06. Le Bâtard (*1)
07. Par Tousles Temps (+)
08. Changement (*1)
09. A Plus D'un Titre (*2)

Édouard Ferlet (piano)
Jean-Philippe Viret (bass)
Antoine Banville (drums on *1&+)
Fabrice Moreau (drums on *2&+)

2022年作品

レーベル:澤野工房 Mélisse

在庫有り
(3面紙ジャケット仕様)+16ページブックレット付きデジパックCD
このCDのみご購入ご希望の場合は、送料込み価格2,640円になります。


アンニュイ&メランコリックなヨーロッパならではの翳ある耽美的ロマネスク・ピアノ弾奏に饒舌な重厚ベースやゲリラティックな猛襲ドラムも生々しく絡む抒情派インタープレイの会心打! CD TRIO VIRET + トリオ・ヴィレ・オーグメンテッド / IN VIVO イン・ヴィヴォ[MEL 666033]

販売価格: 2,520円(税込)
数量:
商品情報
澤野工房

★再び降臨した「至上のトリオ」。緊張感と美しさに溢れた超ハイレベルのインタープレイ。
VIRET TRIOを超えられるものは、TRIO VIRET+のみ。

★ 結局、世の中は不公平に出来ている。何にスポットライトが当たり、それがどう評価されるのかについては、フェアである、ということは原則あり得ない。殊に昨今のような情報化がなされるようになると、情報発信の段階で、そもそも何が取り上げられるかということについて、大きなバイアスが働く。世間の狭いジャズで、ロビイングもないだろうが、Robert Glasperの新作なら何でも取り上げられる、といったような事はどうしようもなくある訳だ。何が言いたいのか?本当に評価されるべきが、まま置き去りにされる、ということだ。

★今回、澤野工房が取り上げたのはJean-Philippe Viretの新作だが、サワノが彼のアルバムを最初にリリースしてから実に20年以上が経過していることに驚いた。時日の飛び去る速さに驚き、その間、この類稀なアーティスト(達)とその音楽が、まともに評価されてこなかった事実に驚く。本邦初登場時のアルバムConsiderationsの段階で、既にその完成度は瞠目するしかないものだった。楽曲そのものとソロの有機的結合、演奏者が一体となって、「作品としての演奏」を作り上げる様は、それまでのピアノ・トリオの歴史を呑み込みながら、更に一歩先んじた極北の音楽だ、と、筆者には思えた。しかし、それに相応しい評価に彼らが浴してきたとはとても思えない。新作は、Viretが組んで来た二つのトリオ(dsのみが入れ替わった歴史だが)がひとつになり、あるいはそれぞれに、かつてのマテリアルも含めて演奏した、言わば集大成的作品だ。

★彼らのみが為し得る、ひりつくような美しさと緊張感をたっぷりと味わえる。是非お聴きになり、「真に評価されるべきもの」を体感していただきたい、と願うものだ
(Text by北見 柊)