CATFISH RECORDS

モダン・ジャズの名匠達の過去の楽曲群に体系的にスポットを当てて再発見に繋げようというPosi-Toneの新シリーズ企画：Blue Moodsの第1弾、＝本盤では、テナーサックスのディエゴ・リヴェラを中心としたワンホーン・カルテットによる、チャールズ・ミンガス作の名曲群の演奏が聴かれる。太く重厚でいてスクリュー的な滑らかな渦巻き感も備わったテナーが、ゆとりを残した悠々たる息遣いで止めどなくスイスイと流れ泳ぎ続ける風な、徹頭徹尾ブルージー&メロディックな「旋律の宝庫」然とした余裕のブロウを、団子を転がすみたいに潤滑に繰り出し又繰り出して鮮麗に、そして中々軽やかに華を成し、一方、バップ、ファンキー、モードの各定番イディオムを的確に使い分けながらドラマティックかつエレガントな立ち働きを粛々と貫いて、道筋に上手くメリハリをつけ、またアクセントをつける表情に富んだピアノ以下、リズム隊のキッチリとツボを心得しかも機動力にも長けた半遊撃的サポートも、ノリとスリルを強力に高めて小気味よく煌めきを放った、全体を通じ主役格テナーのちょっとレイドバックした滑脱な吹鳴が奏効して、ノリよくも心地よく和める音世界に仕上げられた美味内容。歌心とスイング感を最重視し、充分吟醸されたブルース・フィーリングやバップ・スピリットも自ずと有する、取っ付きやすい人情味に満ちた明快直球型の娯楽的ハード・バップ大会が晴々朗々と愉しげに展開され、楽曲=原曲そのものが本来持つ癖の強さ・アクの強さとは裏腹に、演奏の方は衒いやケレンなど微塵もない、さっぱりスッキリとした爽やかささえ感じさせるド真っ当な大衆派エンタテインメント指向の行き方が続く中で、一座の花形:リヴェラ(ts)の、絶えず脱力感を伴ってゆったり悠然と構えたイメージの、タフで力強くしかし微妙にけだるくもある旨味たっぷりのアドリブ・プレイが、何とも粋渋なる見せ場を形作って好調だ。→グリフィンやモブレー、ロリンズらの流れを汲んだハード・ドライヴィングでダイナミックな立ち回りスタイルを基調とするも、その一吹き一吹きは一貫して力の抜けた流れに身を任せるかのような、レスター系とかにも通じるスムースさや丸みを顕示していて、結果トータルとしては、エリック・アレクサンダーやグラント・スチュワートを更にまろやかに寛がせた感じの、レイジー・スモーキーでちょっぴりダルな流線形に近い、なおかつこってり芳醇なコクを多々含んだ誠に快適な音像(モード色はあまり感じられない)に巧まず仕上げられており、全く見事、全く卓抜。硬質堅牢で鋭角的なダイナミズム攻勢に本領を揮うヒラハラ(p)や、ダウン・トゥ・アースでファンキーな重みあるブルース大会に嬉々として興じる深く濃い翳りを帯びたキコスキ(p)、らの活躍もナイス・デリシャスな好アクセント。

01. Better Get It In Your Soul
02. Nostalgia In Times Square
03. Tonight At Noon
04. Duke Ellington's Sound Of Love
05. Orange Was The Color Of Her Dress, Then Silk Blue
06. Peggy's Blue Skylight
07. Pussy Cat Dues
08. Pithecanthropus Erectus
09. Portrait
10. Reincarnation Of A Lovebird
＊all compositions by Charles Mingus

Diego Rivera (tenor saxophone)
Art Hirahara (piano except 05, 08, 09)
David Kikoski (piano on 05, 08, 09)
Boris Kozlov (bass)
Joe Strasser (drums)

2021年6月4-6日NYブルックリンのAcoustic Recording録音

レーベル：Posi-Tone

在庫切れ
可能な限りお取り寄せ致します
見開き紙ジャケット仕様CD