CATFISH RECORDS

★人気ピアノ・トリオ「フロネシス(Phronesis)」の花形で鳴らす一方、自己単独名義のリーダー・アルバムもLoop、Edition、Whirlwindから着々と発表して評判を上げてきた、英ロンドンを拠点に活動する敏腕ピアニスト(1880年から続くロンドンの名門校=芸術大学:ギルドホール音楽演劇学校でジャズ・ピアノのプロフェッサーも務める)：Ivo Neame(1981年生まれ)の、今回は、イングリッド・ジェンセン(tp)やギラッド・ヘクセルマン(g)らを招聘してのビッグ・バンド・プロジェクト(フル状態で総勢13名)的な力作。

★ピタリと息の合ったクールでスマートな様式美的傾向と、猥雑で喧騒なカオスっぽい趣、とを細かに交錯させるホーン・アンサンブルの中々重厚感あるカラフルな鳴動、が問答無用の気魄をもって生々しく迫り聴く者を圧倒し昂揚させる(もしくは洒落た涼やかな音空間に心地よく遊ばせ和ませる)一方、曲毎に厳選されたソロイスト達の伸びやかでありながら結構簡潔にエッセンスを凝縮したアドリブ活躍が、ドラマティックで旨味たっぷりの豊饒気分を満喫させてくれる、全般に色とりどりで起伏に富みストーリー性のある進行構成、でフレッシュな感動が齎される高密度内容。

★どの楽曲にもアレンジ面や作劇的な展開のあり様に細かく周到な意匠が凝らされて、鮮やかな物語調の流れが形作られる反面、ソロ担当の各人はある程度は曲想を踏まえてはいるもののわりかし自由闊達に、決して「役」を演じるわけではないリアル・インプロヴィゼーションに嬉々として興じて、バピッシュ&ブルージーな吟醸味や旨口のグルーヴ感そして瑞々しい迫真スリルがバッチリ顕される、という、トータルとしては、手の込んだドラマツルギー体質とストレートアヘッドな真っ当ジャズ即興の醍醐味とが絶妙の按配で掛け合わされた、無駄なくムラもない何げに中身の詰まった道筋がごく流麗滑脱に軽々構築されていて、全く見事。

★クール・ファンキーでちょっとコンテンポラリー・ファンク的なフィーリングも垣間見せる軽妙小粋さ抜群のN・フェイシー(as)や、ハードボイルドな硬質バッパーぶりを毅然と貫く背筋の伸びたI・ジェンセン(tp)、少々やんちゃでワルな妖しい暗黒アクション技を悠々と繰り出すスパイス係(?)のG・ヘクセルマン(g)、コク深く幾分か泥臭いソウルフル咆哮をカマすG・クラウリー(ts)、清涼剤効果と不穏な怪しさを表裏に放つJ・ハート(vib)、そして、要所要所に浮かび上がってはバップ&ブルースの伝統イディオムに則った陰影濃くスクエアーかつソリッドなビター・テイストの立ち回りでニラみを利かせるかのようなNeame(p)、といった具合で個人プレー・コーナーは極めて豊作だ。

1. The Rise Of The Lizard People
2. Strega
3. Broken Brains
4. Phasing Song
5. Persevere Part 1
6. Persevere Part 2
7. Ghostly Figure

Ingrid Jensen (trumpet)
Noel Langley (trumpet)
Trevor Mires (trombone)
Gareth Lockrane (flute)
Nathaniel Facey (alto saxophone)
George Crowley (tenor saxophone)
Jason Yarde (baritone saxophone)
Gilad Hekselman (guitar)
Jim Hart (vibraphone)
Ivo Neame (piano) (electric piano, keyboard on 7)
Tom Farmer (double bass)
James Maddren (drums)
Jon Scott (drums)

2020年10月6-10日Wonderland Studios(英)録音

レーベル：Whirlwind Recordings

在庫有り
三つ折りデジパック仕様CD