CATFISH RECORDS

★音楽教職者(プロフェッサー)としても著名な、凡そ40年のキャリアを持つニューヨークの正統派モダン・ピアノのヴェテラン実力者：レイ・ギャロン(1958年ニューヨークシティ生まれ)の、満を持しての初リーダー・アルバム、＝旧知の演奏仲間であるケニー・ワシントン(ds)にデヴィッド・ウォン(b)という磐石トリオでの快調編。

★ゴツッとした固さ・骨太さや重みと濃い陰影を湛えた岩石タッチのピアノが、伝統的バップ・イディオムを確たる根幹としながら、小粋でシャレた軽みある歌謡フレーズや吟醸的ファンキー節、モードに寄ったスマートなダイナミック・アクション、モンキッシュなリズミカル・ブルージー調、などといった語法を織り混ぜて表情豊かに奥行きを広げ、しかしトータルとしてはあくまでバップ・ピアノの真髄然とした律儀一徹でスクエアー感ある「殺陣の型」重視タイプの渋〜い頑強げキャラ、へすんなり自然に収束させてちょっと燻し銀っぽい魅力を揺るぎなく揮いきった、直球ド真ん中の好演内容。

★硬派で雄々しく精悍軒昂にして瀟洒な唄心ある概ね生粋ハード・バップ的なアウトライン・イメージのいい意味で適度に朴訥さを感じさせる明朗人情娯楽派スウィンギン快演、が一定の重厚さを伴いつつ敏活に展開され、ベース&ドラムの堅実に安定した律動的グルーヴ感を醸成しながら適所適量にフェイント攻勢も盛り込んでくる、シャープネスと分厚さが渾然一体化した何げに濃やかなサポート、もバッチリとツボにハマり、これに頼もしく支えられ、また触発されて、ギャロン(p)の、一貫して肩肘張らず衒いやケレンも排してひたすら伸び伸びと得意技の披露に興じきる、といった感じの、ごく自然体な泰然悠然と構えた名人芸がさすが醸熟なる冴えを見せてゴキゲンだ。

→パウエルに端を発し連綿と受け継がれてきた硬質で鋭角な力学的バップ・アクション文体、を変らず基軸に据えてスモーキーな翳りある独特のくすんだような堅牢タフネスぶりを簡潔明晰に、ちょっと質素に堂々発揮し、時折モンクに接近した変則パーカッシヴ・ブルース節(もう一つの柱か)や、アーシーでソウルフルな小唄感覚溢れるイナセ肌フレーズ、なども滑脱ナチュラルに差し挟んでメリハリをつけるも、全体を俯瞰するとやはり結構ストイックで一本気な好もしい不器用さ・融通の利かなさ・地味さを美点として堅持した、オールド・ファッションで頑固そうな個性が一点のブレもなく確立され、威風を訥々と放っていて説得力も満点。

01. Kitty Paws
02. Out Of Whack
03. Craw Daddy
04. Harm's Way
05. Back To The Wall
06. I Don't Stand A Ghost Of A Chance
07. That's The Question
08. Hanks A Lot
09. Yesterdays
10. Plus One
11. Make Your Move

Ray Gallon (piano)
David Wong (bass)
Kenny Washington (drums)

米NYブルックリンのAcoustic Recording録音
(2021年カナダ作品)

レーベル：Cellar Music (Cellar Live)

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見開き紙ジャケット仕様CD