CATFISH RECORDS

●イタリアから珠玉の短編集が届いた。通しで鑑賞するも良し、お気に入りの一編を見つけて慈しむも良し。手軽でありながらも無数の楽しみ方をもたらすのが、最高の短編集の条件だと思うが、それは優れたジャズにも当てはまることだ。情熱的なアドリブに血がたぎる物語、色彩感豊かな極上のハーモニーに夢見心地となる物語、シンプルなメッセージが柔らかく沁みる物語等、ここに収められた10編どれもが一級品である。特にカリプソ(tr.1)、ワルツ(tr.2)、４ビート(tr.9)といった多彩なプロット上で、サバティーノの華麗な文体が踊る管入りのオリジナル曲が圧倒的に素晴らしい。彼の技巧煌めくスタンウェイが主人公なら、ハビエル・ジロット(ss,bs)らの管楽器が名傍役としてストーリーに絡む展開には、もうドキドキ、ワクワクの連続なのである。またワイドレンジで芯のある録音に依るところも大きいのだろうが、私はかつてソプラノやバリトン・サックスの音色にこれほど魅了された覚えは無い。しかも合間には４曲のトリオ演奏(tr.3,6,8,10)を絶妙に配置して、ファンを飽きさせない配慮まで行き届いている。デビュー以来着実に人気と実力を増すピアニスト、パオロ・ディ・サバティーノのキャリア集大成となったこの精巧なる逸品は、ジャズを聴き始めるビギナーにも勿論安心して推薦出来る。バラエティに富んだ各楽曲の形態で楽しませ、全体としてはサバティーノ印で整然と調和のとれている様は、絶妙な均衡と言う他はない。私は音楽に包まれ、まるで上質なカトラリーセットを眺めているように幸福だった。このCDを手に取った貴方にもそれぞれの幸福なひとときを保証する。(羽根 智敬氏)

1. Calypso
2. Piccolino / Ninna nanna per Luigi
3. Night and day
4. Shadows
5. The nearness of you
6. Fluttuante
7.Giant steps
8.Wendy
9. Luna del sud
10. Pick yourself up
Rec. Jun.2010

Paolo Di Sabatino(piano)
Marco Siniscalco(bass)
Glauco Di Sabatino(drums)
Javier Girotto(soprano & baritone sax)
Andrea Sabatino(trumpet & flugelhorn)
Gianni Di Benedetto(tenor sax)

2010年6月 録音

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デジパック仕様CD
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