CATFISH RECORDS

★ロサンジェルスを主たる拠点として米西海岸シーンで活躍、ニューヨークへも頻繁に赴きながら、セルフ・プロデュースによる気合の入ったアルバム群を過去四半世紀来中々のハイペースで発表し続け、高い評価と人気を得てきた女性ピアニスト＆コンポーザー：リサ・ヒルトン(米カリフォルニア州サンルイスオビスポ生まれ、同州マリブ在住)の、今回は、このところ連続して組んでいるルケス・カーティス(b)＆ルディ・ロイストン(ds)との鉄壁トリオを率いての、ユニットとして益々深化したところを見せた、またヒルトンのピアノ弾奏にも更なる充実が顕示された練達の一作。

★端正で重心は安定していながら軽やかな脱力感や滑らかさ・遊泳っぽさをも絶妙に伴った、ゆとりとニュアンスを感じさせる、そして丸みと角が混在したような表情豊かな繊細タッチのピアノが、ブルースの旨味とダイナミックなグルーヴ感とロマンティックな哀愁歌謡性、の掛け合わされたメロディック・スインギー・プレイを流麗かつ丹念に紡いで、爽やかであり奥深くもある煌めくが如き華を成し、ベース&ドラムの何げに遊撃力に長けた機動的サポートもノリとスリルを的確に高めて頼もしく魅力を際立たせた、全編明快で親しみやすくダウン・トゥ・アースな吟醸味にも溢れた快演がテキパキと歯切れよく手際よく繰り広げられて、安心してそのテイスティーな世界にハマらせてくれるさすがの充実内容。

★リズム・スタイルは適宜ヴァラエティーに富むが一貫して歌心とノリのよさを最重視したごく摑みやすく分かりやすい娯楽的行き方、が好テンポでイキイキと簡潔敏活に展開してゆき、カーティス(b)&ロイストン(ds)の結構ゲリラ的な変幻突発力・機略縦横さを備えたアタッキングなバックアップに上手く触発されながら、ヒルトン(p)の、例によってここでも「ブルース」に並々ならぬこだわりを見せた(もしくは自ずとその身に深く染みついた真性ブルース者体質か?)、エレガントにしてしっかり粋渋なアドリブ妙技が中々芳醇に冴え渡っていて卓抜だ。

→ストライドやブギウギの手法を使ったレトロめのアプローチや、R&B調のグルーヴ物っぽいノリノリ節、ファンキー系ハード・バップ・ピアノの正統スタイルに則った軽妙な寛ぎ小唄風、ファンキーとモーダルの掛け合わせで勇ましく驀進するスウィンギン・アクションなど、どんな曲でも、どんな局面をも「ブルース化」してしまうそうした醸熟至芸には益々磨きのかかった揺るぎなさが大いに感じられて痛快だが、反面、バラードでは(ブルースになりそうなところも若干あるものの)タッチのきららかな端麗さを活かしつつの、あくまで折り目正しくデリケートな機微に溢れた耽美派ロマンティストの本領も遺憾なく発揮されており、その、星の瞬きを思わせる典雅な弾鳴のあり様は、この上なく瑞々しい妙味に満ちていてこれがまた蠱惑的ですらある。

01. Ernie's Blues
02. Retro Road Trip
03. Nightingales & Fairy Tales
04. Too Hot
05. Unforgotten Moments, Half Forgotten Dreams
06. Stepping Into Paradise
07. Santa Monica Samba
08. Seduction (solo piano)
09. Temporary Lullaby
10. More Than Another Day
11. So This Is Love

Lisa Hilton (piano)
Luques Curtis (bass except 08)
Rudy Royston (drums except 08)

2022年アメリカ作品

レーベル：Ruby Slippers Productions

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CD