★お馴染みコンテンポラリー・ジャズ・ギターの急先鋒=人気スター:カート・ローゼンウィンケル(1970年米ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ)と、スイスの個性派ピアニストにして名アレンジャー:ジャン=ポール・ブロードベック(1974年スイスのバーゼル=Basel生まれ)が組んだカルテットの、2022年の「ショパン・プロジェクト」に続く第2弾となる本盤は、ブラームスの名曲群を独自の現代ジャズに仕立てた「ブラームス・プロジェクト」編=Heartcore原盤作品にボーナス・トラック1曲(別テイク?)をプラスしての日本版化。
★ピアノ・トリオの重厚感あるダイナミックな現代硬派モーダル・バピッシュ・サウンドに、それとはまた異質のメロウ・ドリーミーさと尖ったエッジ感を混在させた未来形ギター弾鳴が被ってくることで、トータル的にはその基盤はメインストリーム・タイプながら一座の花形役を担うギターの音響ならびに節回しがちょっと妖しい香味またはスパイス効果を呼び込み、基盤側を代表するピアノの骨太で鋭角な堅牢アクションとコントラストも鮮やかに対峙の絵図を描ききった、といったような感じの、伝統と革新がスリリングに鬩ぎ合うグルーヴ世界を極めてフレッシュに愉しませる会心打内容。
★(#05や#08辺りの有名曲を除いては)原曲がクラシック音楽だとは云われないと気づかないほどコンテンポラリー・モード・ジャズの音景色に曲想もよく馴染んだ、リズミカル・ビートで鋭敏にノる一種のグルーヴ物っぽいリリカル・アクション調のあくまでメロディックな行き方が続き、ブロードベック(p)以下リズム・セクションの結構頑としてカタギのジャズらしさを死守せんとする"ストレートアヘッド"奮戦と、お構いなしに我が道を突き進む(とは云えアンサンブル形成とかにおいては彼らとキッチリ協調している)ローゼンウィンケル(g)のゲリラ暗躍とが、半ばオセロ・ゲーム的に音空間のカラーを刻々と塗り替え続けて(但し目立つことについてはローゼンウィンケルの方が圧倒的に優勢だ)、生鮮なサスペンスが絶えず聴く者をグイグイ引き込み安心する間もなく最後まで一気にイカせてくれるという寸法だ。
★ローゼンウィンケル(g)の、演目が何であれごく自然体でマイペース〜自己流を保った、即ち、シャープに研ぎ澄まされたフューチャー・ファンク風の立ち回りであったり、ロック寄りの泣きのブルージー節であったり、ジョンスコ辺りに底通するファンク・ジャム調の濁りを含んだダーティー・サウンド攻勢であったりと、音色そのもののトリップ感孕むまろやかな響きとも相まって所謂"バップ・ギター"から遠く離れた(但し#09とか#10とかでは例外的にちょっとバップ寄りのアプローチでグルーヴィーに締め括る)異彩たる弾奏を飄々と普段着感覚で貫いて見せた、そういう巧まぬ軽みある個性のあり様は蠱惑的でさえある。ローゼンウィンケルに喰われ気味ながらハンコック・タイプの洗練力学フレージングでクールに対抗するブロードベック(p)の敢闘もナイス。
01. Hungarian Dance No.1
02. Intermezzo, Op.117, No.2
03. Intermezzo, Op.118, No.2
04. Rhapsody, Op.79, No.1
05. Wiegenlied
06. Intermezzo, Op.116, No.6
07. Symphony No.3 - III. Poco Allegretto
08. Hungarian Dance No.5
09. Ballade, Op.10, No.4
10. Symphony No.4 - III, Allegro Giocoso
*Bonus Track:
11. Intermezzo, Op.118, No.2 (Radio Version)
Kurt Rosenwinkel (electric guitar)
Jean-Paul Brodbeck (piano)
Lukas Traxel (bass)
Jorge Rossy (drums)
2024年4月30日&5月1日ドイツ-ベルリンのSoundfabrik録音
2025年作品
レーベル:
Mocloud (Heartcore Records原盤)
在庫有り
国内盤CD