CATFISH RECORDS

★過去にもこのJazz to Jazz等から幾つかアルバムを出して好評を得ていた、ホアン(ジョアン)・チャモロ一派に属するスペインの女性ヴァイオリニスト兼ヴォーカリスト(テナーサックス奏者でもある)：エリア・バスティーダの、過去盤でも何度か組んでいたスコット・ハミルトン(ts)と今回もまた再び共演を果たした、バックはJ・チャモロ(b)率いるピアノ・トリオが務めるクインテット体制基本(ギターが入る曲もある)での一編。

★柔らかな温もり感や丸みとイキのいいバネっぽさや張りが絶妙に合わさった表情に富むトーンで、ひたすら朗々と優しくも元気にメロディーを歌って、ちょっぴりノスタルジックなスイング・ジャズやミュゼット的趣を醸し出すヴァイオリンが、何とも小粋で吟醸味満点の魅力を放ち、一方、終始肩の力を抜いて悠々と構えつつ伸びやかに流線形を描き哀愁を歌い上げる何げに重心のしっかり据わったテナーのまろやかな寛ぎブロウがまた、スモーキーなレイドバック感とともに豊かな包容力や懐深さ、奥行きあるウォームネスをゆったり揮って頼もしく華を添えた(このヴァイオリンとテナーの息の合ったアンサンブルの妙も聴きもの)、全編を通じメロウ・テンダーで親しみやすいリラクゼーション一杯の音世界に夢心地でハマらせてくれる極楽内容。

★インティメイトで深々とした和み気分と軽やかで小気味のいいノリ、に貫かれた、歌心の泉然たるシンプル・ストレート&ハートウォーミングなセンスよきラウンジ・ムードの抒情派リラックス快演、が余裕と節度を保って滑脱に展開され、ツボを心得たリズム・セクションの温厚穏和な折り目正しき堅実サポートに快適に支えられながら、W花形のバスティーダ(vln)とハミルトン(ts)がワンポイントのゆとりとウィットっぽさを絶やすことなくどこまでもスイスイと流れるように、美メロ満載のアジなアドリブ妙技を軽々繰り出し続けて超おいしい見せ場を飾ってゆく。

★バスティーダ(vln)の、基本は先ずグラッペリ系統のちょっとレトロでオールド・ファッションなブルージー・スイング・スタイルを根幹としていて、鉄板の旨口グルーヴを醸成するものの、同時並行的によりスマートなモダニズムに彩られた瀟洒味たっぷりの小節も多々インサートし、しかも全体を通じてとことん明るく分かりやすく趣味のいい「歌謡性」が全開で揮いきられていて、殊の外ゴキゲンな大豊饒地帯が創出されており全く見事で、かたやハミルトン(ts)の、一貫して泰然悠然とマイルド&テイスティーな「なごみ節」をさりげなく端正に唄って、最高に気持ちのいい寛ぎを満喫させてくれ、後には仄かにイキな含蓄余情が残るという、その、脱力していながら徹底して上品で丁寧な巧まざるジェントルマン体質の吹鳴のあり様も、さすが揺るぎない醸熟ぶりで卓越している。2曲で聴かれる、バスティーダのわりかし低く落ち着いた声質によるムーディーな涼風の如きボサノヴァ・ヴォーカル、も好アクセント。

01. Awful Lonely
02. The Good Life
03. Moon River
04. I'll Never Be The Same
05. Tin Tin Deo
06. O Grande Amor
07. For Sentimental Reasons
08. Não Vou Pra Casa
09. Ja-Da
10. Pure Imagination
11. Lobo Bobo
12. Samba Em Prelúdio
13. Que Reste-T-Il De Nos Amours?
14. The Nearness Of You

Èlia Bastida (violin except 07, 08, 11) (tenor saxophone on 07) (vocal on 08, 11)
Scott Hamilton (tenor saxophone)
Unknown ＝ possibly Carla Motis? (guitar on 08, 09, 11, 13)
Joan Monne (piano except 08, 09, 11)
Joan Chamorro (bass)
Arnau Julia (drums)

2022年スペイン作品

レーベル：Jazz to Jazz

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見開き紙ジャケット仕様CD