CATFISH RECORDS

★ロンドンを拠点に活動し、過去の諸作がいずれも好評だった、英国新世代の正統派ピアニスト：ガブリエル・ラッチンの、リーダー・アルバム4枚目となる本盤は、米ドラムの大物ジョー・ファンズワースを迎えたスペシャル・トリオによる一編＝オリジナル曲集。

★陰影濃くカチッと角張った、石を転がすような固く骨太い、そして打鍵も力強くキレのあるハード・タッチ・ピアノが、伝統的なバップ・イディオムに則った殺陣の型に徹するような渋〜いダイナミック・スウィンギン・アクションを根幹とし、並行して結構黒さを感じさせるところもあるアーシー小唄風のブルージー・フレーズをも豊富に盛り込んで上手く旨味を醸成する、という、徹底してオーソドックスな躍動型メロディック・プレイを終始落ち着いた調子で、一定の安定感とゆとりをもって紡いで何とも粋な華を成し、一方、律動力抜群でいて表情多彩に四方八方から遊撃をかけてくる風なドラムや、重心のしっかりした肉厚トーンでおぼろにウネり揺れ躍りつつ圧倒的なドライヴ感を提供するベース、らの助演も確たるグルーヴと生々しいスリルを的確に体現して頼もしい魅力を放った、全編モダン・ジャズの王道を真っ直ぐに突き進むちょっとオールド・ファッション〜昔気質ともとれる明朗快演が続いて、歯切れよくも美味しく愉しませ、憩わせてくれる安心の充実内容。

★何より歌心とスイング感を大切にした、ブルース・フィーリングも潤沢に備える人情娯楽派ハード・バップ系ピアノ・トリオの鑑とも云うべき、ひたすらノリよく親しみやすいシンプル・ストレートこの上なきメロディック・スインギー奏演が敏活溌溂と、なおかつ和気あいあいのインティメイトさやリラクゼーションも漂わせつつわりかし端正に、そして楽しそうに展開してゆき、ファンズワース(ds)の確固とした壮快なスイング力と機略縦横のカラフルさ・変幻自在さを併せ持つ鋭いアタック!、が卓抜なるリフレッシュ効果とともに好アクセントを形作る生鮮さの途切れない道程の中で、ラッチン(p)の、これぞ"粋渋の極み"たる硬質にして洒脱なアドリブ妙技が風流に、ウマさたっぷりに冴え渡ってゴキゲンだ。

→パウエルを出発点とするバップ・ピアノの正統スタイルを変らず拠り所として、ちょっと燻し銀の趣ある鋭角的ダイナミズム表現＝翳りあるアクティヴ・フレージングで先ずはソリッド&ヘヴィーにシッカと足場を固め、そこへダウン・トゥ・アース&ソウルフルなブルース色濃い漆黒の節回しを多々加えて、アジな吟醸感も演出、その繋ぎ並びに転回としてクール・サウンド的なコードワークや、ハンコック、コリア、エヴァンス(或いは曲名にある通りウォルトンとか)辺りを消化したスマートなモード奏法を滑り込ませてメリハリをつけるが、トータルなアウトライン・イメージとしてはモード色はさほど感じさせない昔ながらの純正ファンキー・ハード・バッパーたる個性が軽々と打ち樹てられており、しかも英国人・ヨーロッパ人らしく特有の折り目正しさや、作法に適った奥ゆかしき立ち居振る舞い・語り口から滲む端麗美、またやや控えめに節度をわきまえたジェントルマンの気品そして余裕がその弾鳴に仄かに顕れていて、そうした誠実真摯そうで謙虚そう加えて何げに懐の深そうな落ち着き払ったキャラは実に雅やかで大いに魅惑的。全般に程好く質素で滋味漂う逸品。

01. Says Who?
02. Prim And Proper
03. A Mother's Love
04. Train Of Thought
05. A Stitch In Time
06. Bird In The Hand
07. O Mito
08. Mr. Walton
09. Rest And Be Thankful
10. Just The Ticket
11. A Song For Herbie

Gabriel Latchin (piano)
Jeremy Brown (bass)
Joe Farnsworth (drums)

2022年5月5日英国ロンドンのLivingston Studios録音
2023年作品

レーベル：Alys Jazz

在庫有り
帯ライナー付き国内仕様・輸入盤 三面デジパック仕様CD