CATFISH RECORDS

★ストックホルムの南ラテン音楽高等学校やストックホルム音楽大学でジャズ・ピアノ並びにクラシック音楽を学び、ピアニスト&作編曲家として幅広く活躍、Prophoneよりの近作群が好評を得ていた、スウェーデンの次世代を担う若手俊英：ヨエル・リュサリデス(1992年スウェーデンのストックホルム生まれ)の、今回もまた鉄壁のレギュラー・トリオを率いての心機一転Act第1弾。

★端正で陰影と透明感の両方に富み、一打一打をじっくりと慎重に、細やかに石を転がしてゆくように弾き鳴らすニュアンス豊かな生鮮タッチのピアノが、現代北欧リリカル派ならではのクールに翳ったメランコリックな詩情に溢れ、またモード系ピアノの正統らしいコンテンポラリー・タイプの敏活ダイナミック・グルーヴ表現も適所に活用して上手くメリハリをつける、トータルとしてはあくまでヨーロピアン・ロマネスクな幽玄深いアウトライン・イメージを崩すことのないストーリーテラー然たるメロディック・プレイをある時はしっとりと、ある時は歯切れよく、滑脱流麗に紡いで瑞々しくも奥行きある華を成し、一方、独特の変移波動的ノリのよさと生々しいサスペンスや浮遊感を的確に醸成するベース&ドラムの、半ばトライアングルなインタープレイ傾向も幾分か強めの何げに機略縦横なるサポートも、全体の迫真性や鮮度を魅力的に高めた、総じて、今日のスカンジナヴィアン抒情指向ピアノ・トリオの真髄を、そのエッセンスを心ゆくまで満喫できる中々の高密度内容。

★仄暗くきめ濃やかな心象風景の推移変遷を微細にスケッチしてゆくが如き、内省的ではあるが決して難解ではなくしっかりとエンタテインメントに昇華されたメロウ&テンダーな落ち着きある静謐アプローチや、そう顕著ではないものの北欧フォーク的テイストを垣間見せつつの吟遊牧歌的行き方、更には、フューチャー・ファンクやある種のニューエイジ・ミュージックに若干接近したようにも感じられるマイルド・グルーヴ路線、などスタイルは適宜ヴァラエティーに富むがそのサウンドはどこを切っても紛れなき「真っ当なリアル・ジャズ」の趣を呈しており、そうした現代感覚にも長じたごく自然な着地のさせ具合、バランスの取り様は実に見事で、1曲1曲は簡潔にまとめられた小気味よく流れ進むバラード・コンセプト主軸の道程の中で、リュサリデス(p)の、一貫して弾きすぎず結構サラリと淡麗な語り口に終始しながら、後には何とも風流な雅趣めいた余情が残る、という、フレッシュでありつつ既に充分練達したアドリブ技〜ストーリーテリングの妙が軽々と冴え渡っていて卓抜だ。

→ヨーロッパの抒情派特有の繊細深遠な耽美性やメロディー・センスの宝庫たるところを遺憾なく発揮しているが、その筆致は哀愁とムードに溢れるものの甘すぎずちょっと物憂い暗影を帯びたビタースウィートな、節度と作法っぽさある控えめの風合いに自ずと制御されており、饒舌になることなくやや無欲恬淡そうにすーっと手短な流れに仕上げて行間含蓄を滲ませる、辺りの機微に富んだちょっと幽遠でもある文脈展開なども含め、巧まずしてナチュラルに身についたリキみなくも殊の外センシティヴな均整の保ち様は絶品。

01. As Night Let Down Its Curtain 1:34
02. Sommarsnö 2:06
03. Cloudberry Hill 4:36
04. Is There A Way 4:05
05. Gowns Of Dark 3:12
06. Procession 4:30
07. Chimera 5:08
08. Stay Now 2:49
09. Echoes 2:11
10. Down And Out 3:10
11. St. Joseph 5:04
12. The Last Verse 4:02
＊music composed by Joel Lyssarides, except 11 by Niklas Fernqvist

Joel Lyssarides (piano)
Niklas Fernqvist (bass)
Rasmus Svensson Blixt (drums)

2021年9月7&8日スウェーデン-ヨーテボリ(イェーテボリ)のNilento Studio録音

レーベル：Act

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