★11歳でフルートを小澤美枝子氏に師事、16歳でテナーサックスを独学で始め、一橋大学在学中より宮ノ上貴昭&スモーキン、池田芳夫カルテットなどでプロとして演奏、1990年奨学金を得て米バークリー音大へ留学し、同校で2年間学んだ後ニューヨークへ移り主流派シーン第一線で修練を積み、1994年帰国、以降自己バンド「KAIMA」やサキソフォビアの他、サイドマンとしてもジャズにとどまらずJ-POPや演歌など幅広いフィールド、幅広い人脈ネットワークの中で精力的に多忙な活動を続け、また自身主宰のレーベル:Mock Hill Recordsも創設して大いに気を吐いてきたモダン・テナーサックスの個性的ヴェテラン実力者:岡淳(おか・まこと)(1963年東京都生まれ)の、今回は、古木佳祐(b)&中村海斗(ds)とのフレッシュなトリオによる、岡が「音楽水車プロジェクト」の一環として岩手県で借りている築65年の家屋において吹き込まれた、生々しい気魄が伝わってくる一編。
★締まりと緩みが自然に混在し、一音一音を細かく丁寧に吹き鳴らす、程好い太さと重量感を呈した旨味こってりなトーンのテナーが、バップ&ブルースの伝統的イディオムに則った陰影濃く渋〜いハード・ドライヴィング・アクションに哀愁歌謡風のマイルド・メロディック傾向を適量加え、トータルとしては決して甘すぎない煤けくぐもったようなスモーキー・グルーヴィーな物憂き人情肌プレイを滑脱に綴って、コク深くも含蓄に富んだ華を悠然と成し、分厚くバネの利いた音色で敏活にウネり跳ねるベースや、ある時はキレ味シャープに躙り寄りまたある時はドシャバシャとけたたましく猛襲するドラム、らのそれぞれしっかりアタッキングな遊撃的サポートも生々しいスリルと安定感あるグルーヴを的確に高めた、全体を通じ硬派サックス・トリオの正統らしい適度にゴツくて燻し銀の趣漂う快演が続いて、実にテイスティーなその豊饒世界に心地よく浸らせる充実内容。
★歌心とスイング感に重点が置かれるものの甘さに流されることなく一定の厳しく引き締まったハードボイルドな表情の保たれた、ハード・バピッシュ・サックス・トリオの鑑たる豪快な推進パワーとある種の武骨さを有した野太い突撃熱演、が雄々しく展開され、スピリチュアルな歌性溢れる古木(b)や威勢よくもすばしっこく絨毯爆撃をかけてくる中村(ds)、らの手加減なき攻勢も頼もしげに魅力を際立たせる中で、岡(ts)の、ロリンズやジョーヘンなどに底通するところのあるダイナミック&ストロングな雄渾のアドリブ妙技が中々芳醇に冴え渡って素晴らしい。
→モーダル・アグレッシヴな音数の多い畳み掛け咆哮を転回として用いるところも一部あるものの、基本はあくまで「バップ&ブルース」にポイントを絞った"粋渋"な語法を根幹としており、グループ全体としては先述した通り豪快武骨(&質実剛健)な印象が強いが岡一人に注目すると確かにタフガイではあるが武骨と云うよりは結構端正な、テンダネス、デリカシー、ニュアンス=機微といった要素を多分に含んだ、パワフルな中に柔和な節度や余裕、機智をそこはかとなく香り立たせるハートウォーミングな吹鳴キャラが確固と打ち樹てられており、その煙霧の如き翳りを帯びた逞しさと優しさ(+奥ゆかしさ)混合のサウンドのあり様は、何とも味わい豊かで懐の広い醸熟の魅惑力に溢れている。
1. Sweet Touch
2. Only One
3. NANANA
4. The Shades
5. Bird's Words
6. Tilted Tick-Tack
7. A Tree Stump
8. Brownian Motion
岡 淳 Makoto Oka (tenor saxophone)
古木 佳祐 Keisuke Furuki (bass)
中村 海斗 Kaito Nakamura (drums)
2023年日本作品
レーベル:
Mock Hill Records
在庫有り
CD