★お馴染みイタリア抒情派ピアノの大御所:エンリコ・ピエラヌンツィ(1949年イタリアのローマ生まれ)の、今作は、マーク・ジョンソン(b)&ジョーイ・バロン(ds)とのトリオ結成35周年を記念して2019年12月仏パリで行なわれたコンサートの模様を収めたライヴ・アルバム。録音エンジニアはステーファノ・アメーリオ。
★非常に端正でキレと滑らかさが自ずと一体化した、機微を感じさせる生鮮クリアー・タッチのピアノが、適度に抑制を利かせながら切々と繊細に、かつ迫真性をもって深い哀感を映し出してゆくメランコリック節であったり、バップ的グルーヴ感と唄物的小粋さを掛け合わせたスウィンギンなスタンダード解釈であったり、の陰影ならびに屈強さに富むビタースウィート風味のメロディック・プレイを歯切れよくも流れるようなたおやかさで紡いで、瑞々しくも余情溢れる感動的な妙味を揮い、肉太音響で滑脱にウネり波打つベースや、シャープで敏捷なパンチキックを嚙ませ刃を突き立ててくる精確無比のドラム、らの生き物の如く絡みつく自在なサポートもノリとスリルを鮮やかに強化しきった、全編ピエラヌンツィ流の躍動型リリシズム探究が気魄も満点にさすがの熟成ぶりを見せる白眉の充実内容。
★旋律や和声の美とダイナミックなスイング感を何より重んじる、ひたすら情緒的で明澄だがその中にピエラヌンツィ独自のダークでニガみあるヨーロピアン文芸アート色も自然に見え隠れして上手い香辛味効果を齎した、敢えて大雑把に捉えるならエヴァンスの流れを正統に汲むインタープレイ度も高いリリカル・アクション奏演、が勢いよくもニュアンス濃やかに展開してゆき、雄弁でウォーム・スピリチュアルなジョンソン(b)や的中率100%っぽく核心を衝いてくるバロン(ds)、の活躍もばっちりテイスティーに際立ち、彼らにも豊富に見せ場が振られ(加えてそのトライアングルな相互触発の生々しさにも大いに昂揚させられ)つつ、ピエラヌンツィ(p)の一音一音に清新な気概のみなぎったアドリブ奮戦がエレガントでいて精悍軒昂なる冴えを、キレを示して全く鮮麗、全く爽快だ。
→肩肘張らずマイペースを保って得意の憂きロマンティシズム表現や鋭角性ある力学的グルーヴ描写、に伸び伸びと興じている風な衒いのないストレートな行き方に終始するも、その弾鳴には殊の外フレッシュな気力の充実が見て取れ、即興の文脈全体は極めて高い密度に無駄なく完成されている、という、アンニュイで翳りを帯びた奥深い愁いの映し出しそして強硬力あるソリッドなダイナミズム攻勢の双方に、誰にも真似できぬ旨味と栄えが巧まずして確固と顕れておりウ〜ム見事。
1. Je Ne Sais Quoi 6:54
2. Everything I Love 5:28
3. B.Y.O.H. (Bring Your Own Heart) 7:23
4. Don't Forget The Poet 9:16
5. Hindsight 7:27
6. Molto Ancora (Per Luca Flores) 5:54
7. Castle Of Solitude 5:21
8. The Surprise Answer 6:00
Enrico Pieranunzi (piano)
Marc Johnson (bass)
Joey Baron (drums)
2019年12月13日フランス-パリのオーディトリウム・ドゥ・ラ・セーヌ・ミュジカルでのライヴ録音
レーベル:
Cam Jazz Free Flying Productions
在庫有り
CD