CATFISH RECORDS

★生まれ育った安曇野を拠点に活動し、先頃出たファースト・リーダー・アルバム「Pioggia」(2018年録音)も好評を得ていたヴェテラン・ベーシスト：中島仁(1963年長野県安曇野市生まれ)の、前作から凡そ5年ぶりのセカンド・リーダー・アルバムとなる本盤は、前作より続投の望月慎一郎(p)(1980年静岡県生まれ)＆橋本学(ds)(1976年兵庫県生まれ)との鉄壁レギュラー・トリオ＝"Kiretto"(2017年結成)を不動の基軸とし、4曲では北欧モダン・テナーの雄オーヴェ・インゲマールソン(1957年スウェーデンのハルムスタッド市生まれ)も加わってくるという、トリオ＆カルテットによる変化に富んだ一編。演目はメンバー持ち寄りのオリジナル曲群。

★ズシリと重厚でありながら歯切れよく撥ねるような軽やかさも備わったベースの太い鳴動が絶えず睨みを利かせ、バンド全体を力強く鼓舞する中で、爽涼かつ端正なタッチのピアノの耽美的ロマンティック・プレイや、ハード・ドライヴ感満点にしてコンテンポラリー・ポップ歌謡っぽいメロディー・センスもバッチリなテナーサックス吹鳴、が生鮮度抜群に華を成し、キレ味シャープ&精確巧緻に躙り寄るドラムや結構雄弁に唄う温もり豊かなベースらの活躍、にも適宜スポットが当てられて上手くメリハリ並びに色彩感が齎された、全般に、今日の和ジャズらしさとヨーロッパ系の唯美派・文芸派的テイストの融和っぽい抒情指向の音世界に快適に浸れる、瑞々しくも奥行きに富んだ妙演内容。

★詩的浪漫や哀愁を潤沢に含んだメロディーの端麗さと小気味よく滑り泳ぐような流れるグルーヴ、を何より大切にした、一聴現代欧州のアート系を思わすトータル・イメージのリリカル奏演が繊細かつスリリングに展開してゆき、随所に浮かび上がってはウォーム・スピリチュアルなメロディック・ソロを簡潔にキメる中島(b)の座長ぶりも頼もしくこってり際立ちつつ、花形役の望月(p)やインゲマールソン(ts)のアドリブ妙技が清新な冴えを、キレを見せて実に爽やかだ。

★望月(p)の、ハンコックやエヴァンス辺りのスマートなモード奏法を一旦ヨーロピアン・フィルターをかけた上で和流化した、とでも云えそうな、フレーズはメロウ・テンダーだが音色・音響そのものの骨太で鋭角な硬質性や強打力が効いて優しい中にもキリッとした凛々しさが光る、輪郭明瞭なる詩人体質の弾鳴キャラが(幾分リーダーの中島に喰われ気味ではあるものの)揺るぎなく確固と打ち樹てられていて説得力も十二分で、一方インゲマールソン(ts)の、中島の作風に巧く調子を合わせながらも基本的にはあくまでゲスト・ソロイストらしくわりかし気ままげに振る舞うその丸みを帯びた滑脱なマイルド・ブロウのあり様が、望月の慎重に考え抜いた立ち居振る舞いとは対照的に自由な吟遊者の本領を悠々揮っていて、これまた風雅この上なし。

1. Zero Jiba (Manabu Hashimoto)
2. The Little Prince (Shin-ichiro Mochizuki)
3. Glacier (Shin-ichiro Mochizuki)
4. Mirror of the Mind (Hitoshi Nakajima)
5. Mañana (Hitoshi Nakajima)
6. Yashima (Manabu Hashimoto)
7. Dawn (Hitoshi Nakajima)
8. Dance with Space People (Hitoshi Nakajima)
9. Hello Again (Shin-ichiro Mochizuki)

望月 慎一郎 Shin-ichiro Mochizuki (piano)
中島 仁 Hitoshi Nakajima (bass)
橋本 学 Manabu Hashimoto (drums)

guest：
Ove Ingemarsson オーヴェ・インゲマールソン (tenor saxophone on 1, 4, 6, 9)

2023年録音
2024年日本作品

レーベル：Blue Cloud

在庫有り
国内製作CD(W紙ジャケット仕様)