CATFISH RECORDS

★1980年代初頭より40余年に渡ってNYシーンで活動を続け、かつてはReservoirの看板スターで大いに鳴らしていた正統派バップ・ピアノのヴェテラン実力者：ピート・マリンヴェルニ(1957年ニューヨーク州ナイアガラフォールズ生まれ)の、今回はウゴンナ・オケグォ(b)＆ジェフ・ハミルトン(ds)と組んだ磐石のトリオ体制によるレナード・バーンスタイン名曲集。

★力を抜いて滑らかに転がすような風合いと、角を立てて固く骨太く重厚かつソリッドにぶつかってくる感じの衝撃性、とが表裏一体を成した、一打一打からコクっぽい旨味がたっぷり溢れ出てくるストーン・タッチのピアノが、伝統的なバップ・イディオムに則った殺陣の型の如きスクエアーなダイナミズム表現と、軽妙洒脱にまろやかな端麗旋律を綴る小唄感覚のメロディック節、を掛け合わせてひたすらリキむことなく自然体で流れに身を任せる風な、小気味のいいリリカル・グルーヴィー・プレイをゆったり伸びやかに繰り出し続けて、何とも粋渋な華を飾った、さすが年季の入った醸熟の味わいに心地よく酔わせる快演内容。

★硬派なハード・バップらしく苦味走った面持ちで真剣勝負の力学的アクションをシリアスに探究してゆく鋭角感あるスリリングな側面と、歌物ならではのマイルドでハートウォーミングな機智にも富んだ和みのストーリーを描いてゆく寛いだ抒情的側面、とをバランスよく細かに交錯させた、基本は何より唄心とスイング感を大切にしての歯切れよくノリノリで親しみやすい大衆娯楽路線、的な人情肌バピッシュ奏演が嬉々溌溂と展開され、オケグォ(b)&ハミルトン(ds)のきっちりツボを心得つつ小回りも充分利かせた中々芸の細かい安定律動ぶりにも光るものがあり、彼らとマリンヴェルニのインティメイトな和気あいあいの交歓ムードが好もしく醸し出される道程の中で、マリンヴェルニ(p)の終始肩の力を抜いて奇を衒うことなく普段着感覚で多様な得意技の数々を悠々出しきる、ことを鷹揚に愉しんでいるイメージの、巧まずして練達し、よく研磨されたアドリブ弾奏が芳醇なる冴えを見せて素晴らしい。

→バップ・ピアノのオーソドキシーを重んじて陰影濃く硬質堅牢にダイナミック・スウィンギンな雄渾たる立ち回りフレーズ!を精悍さをもってキリッと炸裂させ、威厳と風格ある力強いタフネスを確固として発揮しきる一方、瀟洒な美メロ・センスやウィットっぽさそして懐も広そうな自ずと内側から滲んでくる温もりテイストを適度に制御しながら小出しに解き放ってゆく感じの、暗影やシブさを孕んだリラクシング節にも実に含蓄豊かな魅力があり、全体を通じて決してそれと意識させずごくナチュラルに身に染みついた「ちょっと控えめでストイックな佇まい」、が堪らない妙味。

01. New York, New York
02. Lucky To Be Me
03. Somewhere
04. Cool
05. Simple Song
06. I Feel Pretty
07. Lonely Town
08. Some Other Time
09. Its Love
10. A Night On The Town

Pete Malinverni (piano)
Ugonna Okegwo (bass)
Jeff Hamilton (drums)

2021年4月11日Van Gelder Studios(米ニュージャージー州イングルウッド・クリフス)録音
(engineer：Maureen Sickler)

レーベル：Planet Arts Recordings

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三つ折り紙ジャケット仕様CD