★アメリカ黒人フリー・ジャズの王道をひたむきに突き進んだ熱血派アルトサックスの巨匠:ノア・ハワード(1943年ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ、2010年死去)の、本盤は、ESPでの2作品に続いてのサード・アルバム(但、リリースされたのは録音から数年経った1972年頃?)にあたる、アーサー・ドイル(ts)、アール・クロス(tp)ら参加のコンガ入りコンボによる1969年NYC録音の傑作(Freedom FLP 40105)、のCD化・新装再発版。曲は全てハワードの自作。
★一打一撃に濃いスピリチュアリティを含んだドラムやコンガの幾分か猥雑にも感じられるリズミカル&パーカッシヴな問答無用っぽい轟鳴、に強力にプッシュされながら、エモーショナルでパッショネートな哀愁の歌謡アクション調(或いはダーク・ミステリアスな夢幻サスペンス節)と異形でフリーキーな金切り絶叫の間を烈しく行き来する疾走感もみなぎったアルトを始め、ひたすら奇怪なアブノーマル咆哮に終始する野獣の如きテナー、ブルージー・バピッシュとアブストラクトが表裏を成したトランペットの飄遊、不協和音の大洪水をこれでもかと炸裂させつつ結構旨口の吟醸ソウルを垣間見せるところもある「グルーヴィー」なピアノの驀進、等が荒れ狂う疾風、押し寄せる怒涛のように只事でないワイルド・アナーキーな見せ場の競い合い、鬩ぎ合いを繰り広げて、壮絶この上なき昂揚感を満喫させてくれる敢闘内容。
★ブラック・スピリチュアル派フリー・ジャズの一典型を示した、渾沌、無秩序、騒乱とおいしさ溢れる情魂味やスイング感がゴッタ煮風にない交ぜになった、ヴァイオレントにして芳醇なメランコリーにも事欠かぬ大立ち回りの完全燃焼熱演が豪快剛健に展開してゆき、全者一丸となって猛り狂い荒ぶりまくる煮えたぎった大沸騰爆走の連続で、理屈を越えた激烈すぎる興奮と黒い旨味が心ゆくまでたっぷり味わえる。
★中でもやはりハワード(as)の、結構端麗で整った哀切な情熱的フレージングからキリキリ・キイキイと奇形っぽくキレまくった雄叫びまで、中々大きな振り幅を示すも、その剛柔の切り換えは極めて的確であり、他のソロイストがやりたい放題に暴れ倒して乱調化したトータル・サウンドをピリッと軌道修正する役割をもさりげなく果たし、しかもメンバー中最も華=スター性と美味さある鳴音キャラで軽やかに座をさらいきって見せる、辺りの「カッコイイ」態様はさすが。終始一貫して怪異・奇天烈で暴圧的な化け物ぶりに徹してのけるA・ドイル(ts)の超フリーキー・ブロウ!も好インパクト。
1. ドミアブラ
2. オレ・ネグロ
3. マウント・フジ
4. クイーン・アン
Noah Howard ノア・ハワード (alto saxophone)
Earl Cross アール・クロス (trumpet)
Arthur Doyle アーサー・ドイル (tenor saxophone)
Leslie Waldron レスリー・ウォルドロン (piano)
Norris Jones (=Sirone) ノリス・ジョーンズ (bass)
Mohammed(Muhammad) Ali モハメド(ムハマド)・アリ (drums)
Juma Sultan ジュマ (conga)
1969年ニューヨークシティのBell Sound Studios録音
レーベル:
Muzak
*統一ライナーノーツ:片岡 文明
*オリジナル・デザインE式紙ジャケット
在庫有り
国内制作・紙ジャケット仕様CD