★ここ近年日本での人気も急上昇している、トロントやモントリオールのシーンで活躍中のカナディアン歌姫(&ソングライター):ケイティ・ジョージの、今回は、同国の新世代ピアニスト:マーク・リモーカーとのデュオによるジェローム・カーン名曲集(ラスト1曲のみC・ジョージのオリジナル)。
★折り目正しくも歯切れよくスウィンギンにバップ&ブルースの吟醸味やグルーヴをクッキリと映し出す中々雄弁なピアノ弾奏に導かれて、澄みきった爽涼さ+潤いとしなやかな張り&伸びを有したトーンやや高めの生鮮クリーン・ヴォイスが、歌詞やメロディーを大切にする自然体の抒情面と、半器楽的にバップ・ジャズらしいノリを体現したりブルース色濃い豪快なシャウト熱唱をキメたりなどの本格派寄り面、とを上手く使い分け、交差させながらメリハリの利いたドラマティックな流れを形作ってゆく、ブレのない堂々とした構成力抜群の演唱を綴って清々しくも旨味溢れる魅力を放った、会心の好演内容。
★インティメイトな和気や寛ぎを変らず底流させ、同時にダイナミックで骨太いスイング感・躍動感も自ずと醸成される、落ち着いた穏やかな風合いの中に確たる力強さを秘めた敏活滑脱なる行き方が続き、リモーカー(p)のちょっとレトロなストライド奏法とバップ・ピアノの正統らしい渋めの殺陣ワザを細かに織り混ぜた劇的プレイ、も粋で結構重厚そしてコクのある妙味を放ち続けるテイスティー・グルーヴィーな道程の中で、花形:ジョージ(vo)の絶えずシャキッと背筋の伸びた一定の緊張感と凛々しさを身上とし、それでいてキュートな愛らしさも馨しく振りまきつつ伸び伸びと哀歓を活写する歌い回しが、卓越した鮮度と美味さをもって揺るぎなく冴え渡っており見事。
★過去の作品(自己名義作の他ゲスト参加したドン・トンプソン盤やマチュー・スーシ盤とかも含めて)と比べても恐らく今回が最も本格的なジャズ・ヴォーカリストとしての真価を遺憾なく発揮している印象があり(殊に自身の1stアルバムやトンプソン盤辺りではどちらかと云うと柔和な「しっとり系」のイメージだったが、今作での芸風はしっとりと云うよりはもっとシャキシャキした「ハツラツ系」の様相だ)、メロウ・テンダーなリリカル唱法とスキャットやシャウティングを多用したブルージー・グルーヴィー文体をバランスよくミックスして流麗に筆を滑らせてゆく辺りは、エラ・フィッツジェラルドのケイティ・ジョージ流アップデート版の趣が漂うが、ジョージの場合そこへ更に女優のような物語性や"役を生きる"演技力が顕著に加わり、ちょっとした舞台を観る気分(幾分ミュージカルっぽいとも云えるか?)の作劇的文脈・道筋にスッキリ仕上げられるという、そうした、根は「ストーリーテラー」気質の語り口が、微妙なナイーヴさ或いは粗さを伴って清新なる説得力を確固と、毅然と振るっていて全く降参だ。
★安定力と機微を併せ持ったリモーカー(p)の濃やかな助演も光る。
01. ノーバディー・エルス・バット・ミー
02. ア・ファイン・ロマンス
03. イエスタデイズ
04. ハード・トゥー・ハンドル
05. ユー・クドゥント・ビー・キューター
06. ビル
07. アイム・オールド・ファッションド
08. エイプリル・フールド・ミー
09. ピック・ユアセルフ・アップ
10. ザ・バーテンダー
Caity Gyorgy ケイティ・ジョージ (vocal)
Mark Limacher マーク・リモーカー (piano)
2022年8月カナダ-アルバータ州カルガリーのThe National Music Centre録音
レーベル:
Muzak
在庫有り
国内制作 W紙ジャケット仕様CD
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