★ベルギーやルクセンブルクのジャズ・シーンでリーダー&サイドとも多忙な活動を続け、Laborie Records(仏)やCAM Jazzよりのリーダー・アルバムに好評を集めてきたテナー(&ソプラノ)サックスの逸材:マキシム・ベンダー(1982年ルクセンブルクのエッテルブリュク=Ettelbrück生まれ)の、今回は、ヨアヒム・キューン(p)&ダニエル・ユメール(ds)の超大御所連に中堅実力者のステファン・ケレッキ(b)という豪華布陣と組んだ強力カルテットによるルクセンブルクのフィルハーモニー・ホールでのライヴ編。
★ダーク・メランコリックな重厚感ある硬質ピアノや安定したスイング感と半チェンバー的荘厳エレガンスを並行体現するベース、シャープ&敏感に空を斬り刻む精確なドラム、らに導かれて、肉太でコク深いトーンのテナーがハード・バップから半アブストラクトまで包括した中々奔放自在な即興プレイを流麗滑脱に綴って、旨味と威風とダイナミズム溢れる堂々とした華を成し、次いで現れる骨芯の据わったソリッド・タッチ・ピアノの思索性孕む苦味濃いグルーミー・ロマネスク弾奏も濃い口の存在感を頑として放った、全体を通じ現代ヨーロッパ流ポスト・バップの一典型らしい甘さはやや控えめのハードボイルド・アクティヴ熱演が歯切れよく鋭利に繰り広げられて、その迫真力に圧倒されまた壮快に昂揚させられる充実の敢闘内容。
★歌心と今風のスウィンギンなノリのよさを何より重んじるも、決して甘すぎないピリッとした精悍さ・凛々しさを保った上でのモーダル・バピッシュ演奏が、雄渾のスケールと生々しい気魄をもって確固と推し進められてゆき、随所に浮かび上がってはハード・ビター&メディテイティヴだったりしっかりブルージー&ソウルフルだったりの醸熟ソロを炸裂させるキューン(p)の活躍も大いに光っているが、これに断じて引けをとることなく花形主役の座を強堅に死守してのけるベンダー(ts)の、気力とワザの冴え渡ったアドリブ奮戦がエモーショナルに傑出した見せ場を飾りきって胸のすく思いだ。
→ハード・バップ・テナーの正統らしく渦巻くようなドライヴ感とブルース・スピリットの塊たる旨口フレージングで粋渋にスタートし、エキサイトしてくると音数も多く激烈に攻め立て煽り立てるエネルギッシュ・アタック!へ推移、この傾向は幾分か寛ぎめの抒情路線曲においてもソロ・パートが佳境を迎えると爆発するように顕れたりと、その根っこの本性はアグレッシヴ・アクション肌と思しき芸風のあり様は理屈を越えて頼もしい限りで、むしろソプラノに持ち替えた時の方がよりマイルドな哀愁ロマンティスト面が多分に認められる、辺りのバランスのとり具合にユニーク&フレッシュな妙味がある。
★鋭く閃光を放つようなシンバル・ワークの一つ一つに揺るぎない無双のスター性を垣間見せるユメール(ds)の立ち回りもさすが卓抜。
1. Para
2. Kyo
3. Missing A Page
4. Expansion Of Space
5. Shadow And It's Opposite
Maxime Bender (tenor saxophone except 5) (soprano saxophone on 4, 5)
Joachim Kühn (piano)
Stéphane Kerecki (bass)
Daniel Humair (drums)
2022年6月11日Philharmonie Luxembourgでのライヴ録音
レーベル:
Igloo
在庫有り
三つ折り紙ジャケット仕様輸入盤CD