★2022年に亡くなった通好みのコンテンポラリー派ギタリストにして優れた音楽教職者(その教え子にはビル・フリゼール、ジュリアン・レイジ、ジョン・スコフィールド、ラーゲ・ルンド、マイク・スターンらがいる):ミック・グッドリック(1945年米ペンシルヴェニア州シャロン生まれ、2022年死去)と人気の抒情派ピアニスト:フレッド・ハーシュ(1955年米オハイオ州シンシナティ生まれ)、とが差し向かいで組み合うという、1988年8月、当時ボストンで教職に就いていたグッドリックをハーシュが自身そのオーナーであるニューヨークのスタジオに呼び寄せて実現した、未発表デュオ・レコーディングの初ディスク化。
★まろやかな潤いと鋭い張りやキレが一つに合わさった、中々味わい豊かな音色のギターが、ブルース&バップ由来の旨味と現代的憂歌性を併合しつつ流麗に筆を進める、抒情性に富んだクールで翳のある詩的メロディック・プレイをつぶやき語るが如く綴って、何とも幽玄深き妙味を揮い、一方、歯切れよく涼感ある重心の安定したタッチでマイルドなリリシズムと半幾何学的ダイナミズムの間を往来するピアノの、ポエティック・アクションとも云うべきバランスのとれたスインギー弾奏もギターに上手くマッチしながらコントラスト感をもって彩りを加えた、概ね奥行きある哀愁浪漫と端正さを特長とする情緒型のやりとりが繰り広げられて、静かに感動できる気品&節度溢れるレイドバックした充実内容。
★小組曲風の#4の一部でちょっとアブストラクトにフリー・インプロを応酬させる辺りを唯一の例外転回とするものの、そこを除けばほぼ一貫して穏やかで落ち着いたゆとりと嫋やかさを身上とするリリカル指向の、かつインティメイト・ムードの優しいインタープレイが交わされてゆき、両者のリキみなくも濃やかに詩情を映し出すアドリブ妙技の数々が、抜群の鮮度で殊の外瑞々しい見せ場を飾っており、爽快この上なしだ。
★グッドリック(elg)の、研ぎ澄まされたヒンヤリ感とシャープな線の細さ(但し芯はしっかり据わっている)を持ち味とし、ジム・ホールをコンテンポラリー方向へ引っ張ったような、歌心と仄暗いアンニュイ気分に満ちたクーリッシュ&ロマネスクなきめの細かいメランコリー節をひたすら折り目正しくテンダーに紡いで見せる詩人ぶりが、大層雅やかに煌めきを放っていて卓逸で、かたやハーシュ(p)の、大凡のところ主役の座はグッドリックに譲って自身はごく自然体で伸び伸びと(それでいて適度に控えめに)得意技の繰り出しに興じる、柔和なロマンティストにして旨口バッパーでもある躍動の様も清々しさ格別。殊更に似ているわけではないがエヴァンスとJ・ホールのコラボ諸作にも通じるギター&ピアノ・デュオの勝れた逸品。
1. フィーブルズ、フェイブルズ・アンド・ファーンズ Feebles, Fables & Ferns
2. フォーリング・グレイス Falling Grace
3. アウェイ 10 / アメイジング Away 10 / Amazing
4. ファイヴ・エクスカーションズ Five Excursions
5. アウト・オブ・ノーホエア Out Of Nowhere
6. ハートソング Heartsong
7. ソウルアイズ Soul Eyes
Mick Goodrick ミック・グッドリック (electric guitar)
Fred Hersch フレッド・ハーシュ (piano)
1988年8月米ニューヨーク市のClassic Sound Studio録音
レーベル:
Universal Music Japan ECM
在庫有り
国内盤SHM-CD