CATFISH RECORDS

★ピアニスト：レッナールト・シモンソンを中心として2002年に結成され(それ以前も1980年代後期からTrio con Xとして活動していた)、様々なコラボ企画や、ライヴ・レコーディングと多角的活躍を続けつつ、優れたアルバム群を着々と発表して好評を得てきた、スウェーデンのキャリア豊富なヴェテラン腕利き陣による息の長い(前身のTrio con Xからだと40年近い活動歴になる)ピアノ・トリオ：Trio X of Swedenの最新アルバム。

★折り目正しくきめ濃やかでいてゴツッとした固さやキレ、骨太感も備わった中々打鍵の強い透徹かつ堅牢なストーン・タッチのピアノが、デリケート&ロマンティックに哀愁を映すリリカルな節回しを基軸としながら、その言語感覚の根っこにはバップやモードに由来したダイナミズム理念や吟醸的ブルージー・フレイヴァーをしっかり有し、また各楽曲の曲想に呼応する恰好で独特のフォーキー・テイスト即ち北欧民謡風の牧歌性や旅情、奥深いメランコリーをも立ち昇らせる、という、トータルとしては正統抒情派の詩趣や耽美傾向にハード・バップらしいソリッド・グルーヴィーさそしてスカンジナヴィアン固有の哀歌or憂歌っぽさが絶妙のバランスで共存した、陰影豊かで彫りの深い愁いあるメロディック・プレイを端正に綴って何とも云えぬ幽玄に富んだ魅力を放ち、これをシャープ&センシティヴなサポートで盛り立てるドラム&ベースの瞬発力に長けた半遊撃的活躍もフレッシュ・スリリング&スウィンギンに妙味を際立たせた、全般に雅やかなスウェディッシュ・カラーとメインストリーム・ジャズの確たる旨味の融和具合が心地よいノリとアジな情緒を呼び込んで、実に清新な感動が味わえるさすがの熟成内容。

★歌心とスイング感に先ずは重きが置かれつつ、北欧ミュージックとハード・バップの間を寄せては返す躍動型抒情指向の快演が結構歯切れよく進められ、スピリチュアルで雄弁な、ウネりを効かせてよく唄うユーハンソン(b)並びに鋭利かつ精確に空を斬り刻み衝きを入れてくる風なエークベリ(ds)、の助演も各々きららかに光る中で、主役を担うシモンソン(p)の、何げに一切無駄のない、まるで譜面に書かれたように鮮やかな、高密度に完成された構成力抜群のアドリブ妙技が余白を残した悠々たる冴えを示して素晴らしい。

→ヤン・ヨハンソン(ユーハンソン?)ともラーシュ・ヤンソンとも全く異なる、スウェディッシュ・フォーク傾向とハード・バピッシュなダイナミックさを掛け合わせた揺るがぬ語り口が誠に新鮮で、マイナー調の物悲しく憂さ漂う行き方もいいが、どちらかと云えばより明るく晴れやかなマイルド風味の吟遊詩人っぽい丸みを帯びたアプローチにこそ本領が感じられ、それと並行してわりかし硬派で粋渋なブルージー・バップ色濃いオーソドックス筋の文体にも確固としたこだわりが認められたりと、そうした誰にも似ていないユニークな芸風は殊の外瑞々しい驚きと歓喜を齎す。

01. Trust (Lennart Simonsson)
02. Den Signade Dag / Swedish Hymn No 175 (Trad. Hymn)
03. Visa Från Film (Lennart Simonsson)
04. Blues For Jojje (Per V Johansson)
05. Pappa (Joakim Ekberg)
06. Kärlekens Tid (Per V Johansson)
07. The Path (Lennart Simonsson)
08. Så Skimrande Var Aldrig Havet (Evert Taube)
09. Beloving (Lennart Simonsson)
10. Viaticum / Till Stefan (Lennart Simonsson)
11. Moving Forward (Lennart Simonsson)
12. WCOD / We Celebrate Orphei Drängar (Lennart Simonsson)
13. Some Other Time (Leonard Bernstein)

Lennart Simonsson レッナールト・シモンソン (piano)
Per V Johansson ペール・V・ユーハンソン (bass)
Joakim Ekberg ヨアキム・エークベリ (drums)

2025年スウェーデン作品

レーベル：Prophone

在庫有り
デジパック仕様輸入盤CD