★クラブ:Smallsの常連であり、アリ・ローランドらとのグループ:Across 7 Street(←バイアーズがリーダー格である)やグラント・スチュワート、ダニー・ディンペリオ、ニール・マイナーらのサイド他、凡そ30年来NYシーンで多忙に活躍、SmallsやSteepleChaseから意匠を凝らしたリーダー・アルバムを着々と発表して高い評価を得てきたテナーサックスの逸材:クリス・バイアーズ(1970年米ニューヨークシティ生まれ)の、今回は、自身はテナーの他クラリネットやフルートも併用しつつの4管ピアノレス・セクステット(前作「Boptics」と顔ぶれも同一)を率いた一編。
★4管の色彩感溢れる重層的アンサンブルが建築のように轟いて雄渾のスケール感を醸成し、ベース&ドラムの分厚くヘヴィーにダイナミック・スイングする鳴動も的確にノリを演出する中で、陰影に富んだ渋〜い燻し銀の妙味を放つテナーや、ファンキー・バップの化身のようなアルト、ダウン・トゥ・アースな吟醸ソウルたっぷりのトロンボーン、ちょっとミステリアスでいて飄々と軽やかに宙を舞う感じもあるバスクラ、らが敏活かつ和気あいあいと見せ場を競い合ってゆく、アンサンブルの組み立ては極めて巧妙で精緻だがトータルとしてはあくまで分かりやすいエンタテインメントを指向したバピッシュ演奏が紡がれて、結構スッキリと美味しく愉しませる好投内容。
★親しみやすく旨みあるメロディーの美と安定律動的ノリのよさを何より重んじる一方、アンサンブルの設計には適度に入り組んだ複雑な理知性・頭脳性も認められる、そのアンサンブルやピアノレスの編成からは往年のウエストコースト・ジャズに似たクール・ドライなスマートさが浮かび上がり、反面、ソロ・パートにおける各人のプレイは粋でイナセでシブさ漂う純正ハード・バップ風、といった具合で上手くバランスのとれた大衆娯楽の世界が創出されており、そうした道程の上で快活溌溂と、同時にインティメイトに展開されるソロ・リレー合戦が実に豊饒なる盛り上がりを呈してゴキゲンだ。
★バイアーズ(ts他)は必ずしも主役ではなく、曲によっては主役も張るが基本的には群像劇の中の一人という立ち位置をほぼ保っており、その独特の焦げくすんだようなスモーキー&グルーミーなブロウが奮っている他、イキのいい精悍な音色でバイアーズを凌ぐ華々しい活躍を見せるNasser(as)のブルース・フィーリングに富んだスウィンギン咆哮がテイスティーに際立ち、また、こってりアーシーでモコモコこもったモスカ(tb)の霧笛の如き唸りや、低空飛行で空間底部をグルーヴィーに支え賑わせるドグリオーニ(bcl)の嘶き、中々インパクトの強いコク旨な弓弾きで一気に座をさらうローランド(b)のハッスルぶり、といった辺りもそれぞれに濃厚な存在感をバッチリ放っていたりと、超デリシャスな個人プレーの聴かせどころは目白押し。
1. Nihon No Uta
2. Touch And Go
3. Ide Pistare, Ide
4. The Dark Forest
5. Two Hundred And Ten Percent
6. Re-Solutions
7. This Account Is Private
8. Blessing For Giacomo
9. Eleventh Street
Chris Byars (tenor saxophone, clarinet, flute)
Zaid Nasser (alto saxophone)
John Mosca (trombone)
Stefano Doglioni (bass clarinet)
Ari Roland (bass)
Keith Balla (drums)
2024年10月録音
レーベル:
SteepleChase
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