★先年の父ジョンとのコラボ作が好評を博していた(あと、いずれも配信オンリーと思われる自己名義のEP作品やベーシスト:マイルス・ギルバートとの連名アルバムもあった)、ニューヨーク・シーンで活動する正統派の若手トランぺッター:デイヴィッド・スナイダーの、自己単独名義のCDアルバムとしてはこれが初となる、寺久保エレナ(as)、ジェイコブ・チャン(ts)、タイラー・ヘンダーソン(p)ら人気のトップ・スター陣参加のセクステット(うち2曲ではサックス勢の抜けたトランペットのワンホーン・カルテットになる)を率いての一編。
★ファンファーレのようなホーン・アンサンブルが勇ましく晴れやかに鳴り響いた後、ピリッとスパイスが効いていてカラッとドライな朗々と轟く中に微妙に翳ったスモーキー感や濁りも仄めく中々味のある音色のトランペットが、歌心命にしてハード・バップ命のビタースウィートな人情肌アクション風の躍動的ブロウを流麗敏活に綴って、何とも粋な吟醸感漂う魅力を放ち、コク旨なアーシー・ソウルと洗練されたクールネスの間を自在に往来するアルトや、レイジー・デカダンな昔ながらのバッパー気質を身上としながら時折微熱を帯びたアグレッシヴ傾向に転じたりもする機智ある渋筋テナー、ファンキー街道をまっしぐらに突き進むピアノ、らの活躍も色彩豊かに妙味を加えた、全般に明るく愉しくスマートな娯楽指向の行き方が続いてスッキリと爽やかに昂揚させる会心打内容。
★親しみやすいメロディーの美=唄性と安定運動的なスイング感に大方のポイントを絞った、基本はごくシンプル・ストレートなリリシズム溢れるブルージー・バピッシュ快演が溌溂と展開され、わりかし濃やかに創意の凝らされたテーマ・アンサンブルの設計ぶりには1950〜1960年代頃の純正ハード・バップもしくはウエストコースト・ジャズを思い起こさせる伝統志向のアジな趣があり、そうしたモダン・ジャズ全盛期のムードに心地よく半ばノスタルジックに酔わせつつ、次いで現れるソロ・リレー・コーナーがまた徹底してオーソドックスな美味さ格別の盛り上がりを見せて、安心鉄板の豊饒気分が存分に味わえるという寸法だ。
★スナイダー(tp)の、眩い光輝っぽさと薄曇り風の煙霧ような陰影を微細に交差させたトーンも味わい深く、バップ・トランペットの本道ド真ん中を迷いなく邁進するシャープ&ソリッドなキレのある立ち回りを変らず根幹とし、バラードや歌物、寛ぎ抒情趣向的局面ではよりまろやかでソフト・テンダーな風合いを増した端麗ロマンティスト〜詩人にも転じる、そうした、トータルとしてはやはりキリッと背筋の伸びた印象のダイナミック・スウィンガーぶりが堂々とイナセげに映えており、これを強力に追い上げてくる寺久保(as)のこってりしたダウン・トゥ・アースな風情を独特の軽みと小粋さで体現した吹奏(登場するや即座に主役を喰ってしまうさすがスター然とした圧倒的存在感である)や、どんなに激しいハイ・テンポのアクション場面でも一貫してマイルドなレイドバック感を失わないチャン(ts)の幾分泥臭いところもある悠々たる立ち居振る舞い(リラックス主義者の本領発揮?)、なぜか結構出番の多いラニエリ(b)の唸るようなスピリチュアル・プレイ、といった辺りもそれぞれに濃い個性を振るって上手く興が散らされ、一瞬も飽きさせることがない。
1. Marvelous-Lee
2. Avale (quartet)
3. Bye Bye Blackbird
4. Robot Portrait
5. The Music Is The Bandleader
6. Mama Bear (quartet)
7. Tim And Bim
8. Hackensack
David Sneider (trumpet) (maybe flugelhorn? on 2)
Erena Terakubo (alto saxophone except 2, 6)
Jacob Chung (tenor saxophone except 2, 6)
Tyler Henderson (piano)
Joey Ranieri (double bass)
Wille Bowman (drums)
2025年1月5日米ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのVan Gelder Studios録音
レーベル:
Cellar Music (Cellar Live)
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