ビル・エヴァンス(p)(1929年米ニュージャージー州プレインフィールド生まれ、1980年ニューヨーク市マンハッタンで死去)の、1964年から1969年にかけてフィンランドで録られた3つの未発表(但し2つ目のセッションのうちの2曲は過去に海賊盤で出ていたことがある)ライヴ音源、即ち、チャック・イスラエル(b)&ラリー・バンカー(ds)とのトリオによる1964年8月13日ヘルシンキ録音、ニールス・ペデルセン(b)&アラン・ドーソン(ds)とのトリオにうち1曲ではリー・コニッツ(as)も客演する1965年11月1日ヘルシンキ・ジャズ・フェスティヴァル録音、そしてエディー・ゴメス(b)&マーティー・モレル(ds)とのトリオによる1969年10月28日タンペレのタンペレ大学での録音、以上をまとめた価値ある発掘アルバム。鋭いキレのよさと滑らかな潤いっぽさを兼備し、澄んだ透明感を湛えた、打鍵は精確で強堅でもある端正なクリスタル風タッチのピアノが、マイルド・ロマンティックな詩情を映し出すと同時に敏捷でスリリングなダイナミズム表現やブルージーな旨味の醸成をもごく自然に絡めた、「元祖リリカル・アクション」の純然たる典型を示す躍動型メロディック・プレイを流麗に紡いで生鮮度抜群の爽やかな華を成し、ベース&ドラムのアタッキングなサポートや歌性あるアドリブ・ソロも程好いインタープレイ色とともに魅力的彩りを加えた、全編これぞ"エヴァンス・ジャズの真髄"とも云うべき機動力溢れる耽美世界が溌溂と活写されて、清々しい興奮と感動が味わえるさすがの充実内容。いずれのセッションでもエヴァンス(p)は最良のコンディションを保ちつつごくマイペースで美メロの探究に余念のないところを見せ、共演者が変わるとグループのトータル・サウンドに変化も出てくるが、主役のエヴァンス(p)はあくまでエヴァンスらしさを貫いたその詩人ぶり・端麗旋律家ぶりに1ミリもブレるところがない、というまさしくエヴァンスを愉しむためのエヴァンス・カタログ的な密度の濃い構成となっている辺りが嬉しい。エヴァンス(p)の、例によって、メロウ&テンダーでありながら研がれたシャープネスやスピード感も欠かさず、しかも一貫してエレガントに、そしてダイナミックに、美しくも彫りの深いメロディーを歌い上げて軽妙に舞い泳ぎきったその典雅な雄姿が眩い煌めきを放っていて格別で、また、多弁かつヴォリューミーに音空間を揺さぶり適度にヒズませるイスラエル(b)(このヒズみに関してはやはり録音上の問題か?第3のセッションでのゴメスの音のクリアーさ〜輪郭のシャープさとは対照的ではある)や、同じく雄弁だが手を代え品を代えの多彩さで饒舌に迫るゴメス(b)、切れ味鋭く芸の細かいスピーディーな研ぎ澄まされたパンチ・キックの連射で圧倒的スリルを齎すバンカー(ds)やモレル(ds)、そしてじっくりと腰を据えて躙り寄り唸るような若きペデルセン(b)(このペデルセンやコニッツの登場する第2のセッションは本作中最も"陰"〜"くぐもり"の要素が強まった印象がある;但し録音・整音法によるところも多いと思われるが)、といった具合でフレッシュ・テイスティーな聴きどころは実に豊富だ。
CD 1:
1. ハウ・マイ・ハート・シングス
2. カム・レイン・オア・カム・シャイン
3. ナーディス
4. 枯葉
5. ファイヴ
6. デトゥアー・アヘッド
7. カム・レイン・オア・カム・シャイン
8. マイ・メランコリー・ベイビー
CD 2:
1. ヴェリー・アーリー
2. フー・キャン・アイ・ターン・トゥ?
3. ラウンド・ミッドナイト
4. グロリアズ・ステップ
5. ターン・アウト・ザ・スターズ
6. 枯葉
7. クワイエット・ナウ
8. エミリー
9. ナーディス
CD1-#1〜#5:
ビル・エヴァンス (piano)
チェック・イスラエル (bass)
ラリー・バンカー (drums)
1964年8月13日フィンランド-ヘルシンキでのライヴ録音
CD1-#6〜#8:
ビル・エヴァンス (piano)
ニールス・ペデルセン (bass)
アラン・ドウソン (drums)
リー・コニッツ (alto saxophone on #8 only)
1965年11月1日フィンランド-ヘルシンキ、ヘルシンキ・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音
CD2:
ビル・エヴァンス (piano)
エディ・ゴメス (bass)
マーティ・モレル (drums)
1969年10月28日フィンランド-タンペレのタンペレ大学でのライヴ録音
レーベル:
Elemental Music Universal Music Japan
*英文ライナーノーツ・日本語訳付
在庫有り
国内仕様輸入盤2枚組(三つ折り紙ジャケット仕様)CD