★ロンドンに本拠を置きながらヨーロッパ一円で精力的に活動している英国の新世代ギタリスト:トム・オレンドルフの、レギュラー・トリオによる初アルバム。
★きめ濃やかで潤いや透明感に溢れ、と同時に仄かに翳った濁りや墨っぽさを垣間見せるところもある、極めてセンシティヴなニュアンスに富んだ何とも味わい豊かなトーンのギターが、マイルド・ロマネスクな半牧歌的抒情性一杯の柔和げメロディック節を根幹とし、時折より不透明にくぐもったアンニュイで鋭いキレのある憂き敏捷アクション・フレーズも盛り込んでピリッとスパイス風に緊迫感を醸成、トータルとしてはあくまでメロウ&テンダーな独特の甘美さ(但し甘すぎない)に彩られた優しさと落ち着きあるリリシズム世界を、節度&気品をもって中々しっとりと丹念に描ききった、瑞々しさ抜群の快適内容。
★リズム・スタイルは適宜今風でヴァラエティーに富み、詩的でエレガントかつ親しみやすい歌心表現と、軽快で小気味よく歯切れのいいノリ=グルーヴ感の演出、に変らず主眼を置いた現代派ギター・トリオの正統らしい流麗滑脱なメロディアス指向のリリカル奏演、がジェントル・スインギー&デリケートに展開してゆき、ベース&ドラムの安定した律動感とリアル・インタープレイ型の迫真サスペンスor浮遊感を的確に交錯体現する芸の細かいサポート、も音空間全体に絶妙の推進力と緊張を齎して頼もしく魅力を際立たせる中、これに上手く触発されながら、オレンドルフ(g)の、筆致には程好い幅があるもその本性は「耽美派ロマンティスト」然とした、終始一定の余裕や洗練された瀟洒センス〜機智を失うことのない、徹底してポエティック・ドリーミーな語り口が清々しくもどこか儚げに冴え渡って実に素敵だ。
→基本としては、パット・メセニーやジム・ホール辺りに底通する浪漫詩人的芸風を今日化・アップトゥデイト化したとも云うべき、コンテンポラリー・リリシストたる一種の吟遊流離者めいたソフトでまろやかな(ちょっと旅唄〜紀行詩っぽい雰囲気もそこはかとなく漂う)歌い様、にワン&オンリーの清新この上なき妙味が振るわれているが、その一方、4ビートで直線コースをまっしぐらに邁進スイングする局面にあっては、幾分かオールド・ファッションな伝統を重んじるクール派バッパーぶりに嬉々として徹して見せたり、歌物バラード趣向における粋な寛ぎ小唄的ロマンティシズム表現の吟醸っぽい味わいにも確たるところがあったりと、わりかしオーソドックスめのアプローチにもしっかりした研鑽の跡を窺わせて説得力充分な引き出しの多さを発揮、しかも全体を通じてその弾奏には巧まずして自ずと抑制・制御のかかった決して弾きすぎない簡潔達観さ・含蓄深さが顕れてもいて、誠に魅惑的。
1. A Song For You
2. Spring
3. Etude 1 (solo guitar)
4. Not In These Days
5. XY
6. Autumn In New York
7. Aare
8. Etude 3
9. These Days (solo guitar with over dubbing)
Tom Ollendorff (guitar)
Conor Chaplin (bass except 3, 9)
Marc Michel (drums except 3, 9)
2019年12月2&3日英国-ウェールズのGiant Wafer Studios録音
レーベル:
Fresh Sound New Talent
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デジパック仕様CD
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