★お馴染み、現代和流抒情派メランコリック・ピアノの筆頭スターにして独創的な名コンポーザー=豊かな円熟味と清新な透明感を兼ね備える才媛:西山瞳(1979年大阪府生まれ)の、デビュー20周年を記念するアルバムであるこの最新作は、好評を博した「Dot」や「Echo」のライヴ版、的な、即ちピアノ・トリオに2リード&ヴァイオリンを加えた(メンバーも先作群と同一)セクステットによる、2025年11月15日渋谷・公園通りクラシックスでの公演の模様を収めた実況盤。曲は勿論西山の自作。
★清涼感と深い昏さが一体となったその潤み様に心地よく引き込まれる、滴のような端正なクリアー・タッチのピアノが、陰影濃いメディテイティヴな心象風景をスケッチするかの如き物憂くレイジーなメランコリー表現を、現代のモード・ジャズらしいダイナミズムやグルーヴ感加えてブルース由来の旨味も適所適量盛り込みながらしっとり優しく、そしてどこか儚くたゆたう風に綴れ織る、という殊の外繊細なニュアンスと落ち着いたエレガンスを感じさせるマイナー調のメロディック・プレイをセンシティヴかつちょっとクールに繰り出して、幾分控えめな節度っぽさの中に生鮮さが滲む、奥行き豊かで誠に瑞々しい雅やかな華を成し、2リードの結構モーダル・バピッシュ(またある時は室内楽風)な吹鳴や、チェンバー色の強いヴァイオリンの弓弾き、ドラム&ベースの鋭敏にウネり波打つ精緻なスイングぶり、もそれぞれしっかりテイスティーに際立つが、空間の中心には絶えず確固とピアノが据わっていて瞑想ムード濃いアンニュイ&グルーミーな独自の詩情世界を孤り決定づけて見せた、何とも云えぬ幽玄漂う風雅な妙演内容。
★荘厳できめ濃やかな内省感の反映された、西山流の現代スピリチュアル・ジャズとでも云えそうな大方はバラード・コンセプトを基調としたインティメイトでいてインタープレイの迫真スリルあるリリカル演奏が、チェンバー・テイストを絡めつつ至って流麗に展開してゆき、細密で整った様式美をほぼ絶やさぬ道程の中、魂の世界を旅する吟遊詩人のような西山(p)の物悲しさや寂しさとノリのよさを併せ持ったアドリブ妙技が、西嶋(b)&則武(ds)にガッチリ支えられ、またmaiko(vln)、鈴木(cl)、橋爪(ts)らに上手く呼応する恰好でゆったりじっくりと端正に見せ場を飾っており、静かに感動が押し寄せる寸法だ。
→例によってピエラヌンツィを端緒とする哀愁と翳りに満ちたビタースウィートなポエティック・フレージングが、本作では特にイントロスペクティヴな思索瞑想傾向へ大きく振れた形で研ぎ澄まされた冴えを、キレを見せていて、一種のニューエイジ・ミュージックへ急接近したかと思えばブルース&バップのオーソドキシーに則った吟醸感やスウィンギンさがチラリ顔を覗かせたりと、何げに幅があってバランスのとれた懐の広そうなゆとり溢れる弾鳴キャラ(またいつものように涙の滴を思わせる西山のキラキラしたピアノの響鳴がここでも健在・益々快調だ)は説得力十二分。
★わりかし出番の多い西嶋(b)の雄弁な歌いっぷりや、ハートウォーミングで穏やかなmaiko(vln)&鈴木(cl)の作法に適った立ち居振る舞い、リアル・ジャズ然たる渋〜いコクを放つ橋爪(ts)の滑脱ブロウ、などサイド陣活躍の聴きどころにも事欠かず、また大凡のところ仄暗くシリアスめの行き方が続いた後、ラスト1曲では一転して明るい陽光が射すかのような晴れやかな歌謡性・牧歌性一杯のおおらか快演で終わりを迎える、辺りの進行構成もナイス。といった具合で、西山の揺るぎない孤高ぶりに今回もまたウナりにウナる、さりげなく軽々と超絶を極めた傑作。ウ〜ムおみそれしやした。
1. Tidal タイダル (8:50)
2. Black Water ブラック・ウォーター (10:51)
3. Arrakis アラキス (11:31)
4. Ebonies エボニーズ (9:12)
5. Relief #1 レリーフ1 (7:36)
6. Layer レイヤー (3:42)
7. Dot ドット (12:40)
8. Bye Bye Blue Fish バイ・バイ・ブルー・フィッシュ (9:05)
(全8曲 73:32収録)
西山 瞳 Hitomi Nishiyama (piano, composition)
西嶋 徹 Toru Nishijima (bass)
則武 諒 Ryo Noritake (drums)
鈴木 孝紀 Takanori Suzuki (clarinet)
橋爪 亮督 Ryosuke Hashizume (tenor saxophone, flute)
maiko (violin)
2025年11月15日東京・渋谷、公園通りクラシックス(東京都渋谷区宇田川町)でのライヴ録音
レーベル:
Meantone Records
在庫有り
国内制作・W紙ジャケット仕様CD
★HITOMI NISHIYAMA / 西山瞳
1979年生まれ。2005年、横濱ジャズプロムナード・ジャズコンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。 2006年、スウェーデン録音の1stアルバム『キュービウム』をアミューズよりリリースし、デビュー。2007年には、日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズフェスティバルに招聘され、以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。 2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、自作曲「アンフォールディング・ユニバース」がジャズ部門で3位を受賞。 2011年発表『ミュージック・イン・ユー』では、CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。 2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカヴァーするユニットNHORHMを始動。アルバム『ニュー・ヘリテージ・オブ・リアル・ヘヴィ・メタル』は発売前よりヘヴィメタルとジャズ両面から話題になり、ジャンルを超えたベストセラーとなった。シリーズ続編3作もいずれも高評価好セールスを記録。以降、文筆活動を通じてもジャズとヘヴィメタルを横断した活動を継続中。タワーレコード運営のインターネットメディアMikikiにて継続中の連載「鋼鉄のジャズ女」は、同サイトで圧倒的人気を誇る。 2023年『Dot』、2024年『Echo』は、ジャズ、ヘヴィメタル、クラシックを踏まえた活動集大成の連作として発表され、ストリーミング・サービスを中心に世界中で聴き続けられている。 現在は、自己のトリオを中心に、全国のジャズフェスティバルやホール公演、イベント、ライブハウスなどで演奏活動中。 オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。