★田村夏樹(tp)(1951年滋賀県生まれ)と藤井郷子(p)(1958年生まれ・東京都出身)のお馴染みフリー派夫妻コンビは、過去凡そ30年に渡ってレコーディング&ライヴともライフワーク的にデュオ演奏を重ねてきたが、今回これが通算10作目となる最新デュオ・アルバム(=樹木をテーマとした連作オリジナル曲集)が登場。
★重厚で骨太くガキゴキ&ズッシリと轟くピアノの硬質的かつメディテイティヴな弾鳴が荘厳なるオーラを放つ中、そう表立っては見せぬもののブルース&バップの伝統的言語感覚に則ったと思しきトランペットの、歌心に溢れた音響も美しい強靭吹鳴が威風ある華々しい雄渾の見せ場を飾り、花形の座はトランペットに一歩譲りつつもエレガントとアブストラクトの両極端を往来する内省的ロマンティシズム表現に奥深い妙味を発揮するピアノの活躍も、頑として濃い存在感を際立たせた、全体を通じリアル即興度は極めて高いもののあくまでメロディックに哀愁を唄うトランペットの個性に象徴される如く、わりかし摑みやすい情緒型の音世界をスッキリ愉しませる感動的な敢闘内容。
★完全なフリー・インプロヴィゼーションとは一線を画す楽曲=コンポジション演奏を基本とし、しかもスロー・バラードがメインでアルバム全体は組曲風の統一感にまとめられる、という本来フリー派の二人が抑制を利かせて(勿論ピタリと息を合わせて)抒情派モダン・ジャズに最接近した風な、ポエティックでエモーショナルな結構正攻法の道程が形作られており、そうした中で田村(tp)のメランコリーと浪漫に満ちた生粋メロディストぶりや、藤井(p)のピリ辛スパイスの効いた瞑想詩人ぶりが、情感濃やかにじっくり堪能できる寸法だ。
★とりわけ田村(tp)の、似ているわけではないが1960年代後期から1970年代頃のマイルスにもどこか底通する、即ち、ハードな激烈フリー・ブローイングを鋭く炸裂させながらも決して詩情やメロディーを犠牲にせず手放さない、凄味ある咆哮の内側から憂きロマンが立ち昇ってくるその彫りの深い鳴動のあり様(→そうした半散文的硬質バラード表現のセンスはさすが年季が入っており卓越している。見事!)は味わい格別。
★かたや藤井(p)の、リリシストに徹した田村に比して幾分か打楽器的抽象主義っぽく異形に暴走するところもあるものの、大凡の場面では(例によってポール・ブレイやマリリン・クリスペル、マイラ・メルフォードらに通じるも趣は違える)静かで穏やかなメディテイターにほぼなりきった厚みあるダーク・フレージングにも、また瑞々しい魅力がある。
1. Keyaki (9:40)
2. Sugi (6:56)
3. Hinoki (9:48)
4. Kusunoki (10:01)
5. Arakashi (6:49)
6. Icho (6:35)
7. Kunugi (7:56)
8. Dan's Oceanside Listening Post (bonus track) (4:52)
*all composed by Natsuki Tamura (BMI)
except #8 by Satoko Fujii (BMI)
田村 夏樹 Natsuki Tamura (trumpet)
藤井 郷子 Satoko Fujii (piano)
2025年7月15日 Orpheus(東京都江戸川区西小岩1丁目)録音
2025年日本作品
レーベル:
Libra
御予約商品
2025年9月19日発売予定
国内制作・紙ジャケット仕様CD
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