★マリリン・クリスペル(p)(1947〜)を筆頭に泣く子も黙る猛者連が集結したフリー派ピアノ・トリオ：Dreamstruckの、Not Twoでの1作目(2018年)に続く好調セカンド・アルバムが、ポーランド-ワルシャワに本拠を置くフリー・ジャズ・レーベル:Fundacja Słuchaj!から登場。曲は銘々の持ち寄ったオリジナルや3者の共作(完全即興?)。
★骨太くもキレがよく鋭角的に尖った風合いの硬質ストーン・タッチ・ピアノが、透明感と濃い陰影を交差させながら甘さを排しピリピリと緊迫したアブストラクトな、しかしその抽象的表層の内側から奥深い耽美的ロマンティシズムや詩情、或いは独特のユーモアをも見え隠れさせる、コワモテだが本性はあくまでリリカルなソリッド・インプロヴィゼーションを中々流麗に繰り出して、何とも雅趣に富んだ味わい豊かな華を成し、一方、太く重厚なウネり波打ち鳴動の中に雄弁な唄性やスピリチュアリティを滲ませるベース、シャープな斬り込みワザとワイドでゴツい体当たり的攻勢とで遊撃っぽく迫るドラム、らの変幻自在かつ当意即妙のアタッキングな絡みつき様も生々しいスリルとパルスなグルーヴを上手く醸成して魅力を際立たせた、全編辛口ではあるがしっかりした人間味や浪漫溢れる敢闘の連続で壮快に昂揚させ、大いに感動させてくれる充実内容。
★リアル・フリー即興度は極めて高く異形でアナーキーな趣も濃いものの、トラック毎にテイストを違えるそれぞれに確固とした「曲」らしさ〜情緒性が認められ、しかも1曲1曲は結構簡潔にまとめられ好テンポで歯切れよく進むメリハリもバッチリ利いた半ドラマティックな道程の中で、一座の花形役を担うクリスペル(p)の、ダーク・ビターにしてポエティシズム満点な腰の据わったインプロ奮戦が、実にエモーショナルに冴え渡っていて素晴らしい。
→セシル・テイラー辺りにも通じる激烈で破壊的な速射パーカッシヴ猛襲をかけてきて圧倒するところもあるが、基本はむしろ、当トリオのトータルなアウトラインが1960年代ポール・ブレイ・トリオの今日流アップデート版とでも云えそうなイメージを有している、ということもあって、クリスペル(p)のプレイもスタイルこそ似てはいないもののポール・ブレイ的ハード・ポエット精神を現代に継承する感じな、切迫した尖り具合とECM物とかに近い深遠なる"心象詩"風のロマネスクな情趣とがナチュラルに掛け合わされた、妖しく厳しく翳っていながら同時に繊細でテンダーな憂愁溢れるストーリーテリングに伸び伸びと本領が揮われており、そのピリッとしていつつどこか悠然たる佇まいを呈した弾鳴は、誠に風雅そして聴き終えた後に爽やかな余韻＝深い幽玄が残る、さすが醸熟の(かつ他の追随を許さない無双の)妙味だ。
01. A Moment In The Shade 1:09
02. For Ornette 4:36
03. MGJ 3:15
04. We All Make Mistakes 7:24
05. Drums 2:53 (solo drums)
06. With Grace In Mind 2:36
07. Transits 6:28
08. Midnight 4:28
09. GS2 7:41
10. Speak Up 2:47
11. Gary's Tune 4:47
Marilyn Crispell (piano except 05)
Joe Fonda (bass except 05)
Harvey Sorgen (drums)
2021年6月26日米ニューヨーク州ソーガティーズ＝SaugertiesのArea 52 Studios録音
レーベル：
Fundacja Słuchaj!
在庫切れ
可能な限りお取り寄せ致します
見開き紙ジャケット仕様CD
