★依然チャレンジングな躍進を続ける新感覚派・独創肌アメリカン・ジャズ・ギターの重鎮:ビル・フリゼール(1951年米メリーランド州ボルチモア生まれ)の、2年ぶりとなるニュー・アルバムは、グレゴリー・ターディー(ts,cl,bcl)、ジェラルド・クレイトン(p)、ジョナサン・ブレイク(ds)とのベースレス・カルテットによる新旧織り交ぜた自作曲集。
★爽涼できめ細かくもちょっとミステリアスな思索性を漂わせる陰影に富んだクラリネット吹鳴や、温もりと安定感あるおおらなテナー・ブロウ、ある時はマイルド・ロマネスクに和んだ詩情を歌いまたある時はキレ味鋭くダーク・ハードボイルドに憂き情景を映すピアノ、そしてコンテンポラリー系統のビタースウィートなブルージー・アクションと安らいだ牧歌的フォーキー節を的確に使い分け、また融合させる厚みあるギターの調べ、加えて背後からじわりと躙り寄りつつ多彩で意表性充分のアタックをかけてくるドラム、らが渾然と交錯するようでありながらピタリと息の合った遠心力に富むアンサンブルをスリリングに形成して、独特の余情深いリリシズム世界を創出したユニークな高密度内容。
★ベースレスゆえにシャープネスや軽みが巧まず強まった歯切れのいいノリ具合も心地よく、硬軟・剛柔のメリハリはあるもののトータルとしてはほぼ一貫して抒情指向のメロディアス&今流リズミカルな快演、が滑脱に展開してゆき、ある種のサスペンス・ミステリー調の生々しいインタープレイ傾向とハートウォーミングな寛ぎムードがごく自然に共存する、フリゼールならではの「現代旅唄」っぽい風趣も仄めくあくまで親しみやすい娯楽的道程の中で、銘々の抑制と伸びやかさを併せ持った中々構成センスも抜群なアドリブ活躍が、カラフル&テイスティーに鮮麗なる盛り上がりをカッチリした簡潔さをもって呈しており見事。
★ターディー(ts,cl,bcl)の、柔和で鷹揚なバラード型のリラクゼーション&ロマンティシズム描写と、ちょっと妖しく翳り濃いメディテーショナル文体、を混合しながら流麗に筆を滑らせてゆく吹奏の様が、一定の節度をわきまえた上でこってりした旨味と華々しいスター性を放って爽やかに花形ぶりを見せており、またクレイトン(p)の、苦味走ったソリッド&スクエアーな鋭角的立ち回りの内側からバップやブルースに由来した渋い吟醸感も匂わせる抑え役的堅牢プレイ(ソロ・ピアノ曲では現代音楽寄りの内省的アプローチとかも披露して適宜驚かせてもくれる)も的確にツボにハマり、真打ち然と悠々登場してくるフリゼール(g)の、例によってアメリカーナ系統の吟遊詩人的なまろやか風味の哀愁表現と、今日感覚を豊富に反映したややシリアスでピリッとニガい躍動的グルーヴ節、をクロスさせつつゆったりと歩を進める弾鳴のあり様も、さすがの大物感に溢れた醸熟の魅力を軽々揮っていて卓抜。
Disc 1
Side A:
1. Dear Old Friend (for Allen Woodard)
2. Claude Utley
3. The Pioneers
Side B:
1. Holiday
2. Waltz For Hal Willner
3. Lookout For Hope
Disc 2
Side C:
1. Monroe
2. Wise Woman
3. Blue From Before
4. Always (solo piano)
Side D:
1. Good Dog, Happy Man
2. Invisible
3. Dog On A Roof
Bill Frisell (electric guitar except C-4, D-2) (acoustic guitar on D-1) (baritone guitar on D-2)
Gregory Tardy (clarinet on A-1, A-2, C-2, C-3, D-1) (tenor saxophone on A-3, B-1, B-2, C-1, D-2, D-3) (bass clarinet on B-3, C-1)
Gerald Clayton (piano)
Jonathan Blake (drums except C-4)
ニューヨーク市クイーンズ区アストリアのthe Samurai Hotel録音
(2022年アメリカ作品)
レーベル:
Blue Note
在庫有り
2枚組180g重量盤LP
VIDEO