★アンデシュ・ヨルミン(b)の弟であり、ドラマーとピアニストの二足の草鞋(わらじ)で精力的に、幅広く活躍してきたスウェーデンの逸材:クリスチャン・ヨルミンの、自身はピアノに専念したベース&ドラムとの緊密トリオによる自作曲集。
★固く鋭角で中々骨太く、濃い陰影と澄んだ潤いが渾然と同居した感じもある、ある時は岩石、ある時はクリスタル風の端正なソリッド・タッチのピアノが、妖しく翳った心象風景の中を彷徨うようであり、しかしそれは同時にダイナミックな烈しい動きを伴った形で力強く具現化されてゆく、という、現代欧州流抒情派らしい繊細でアンニュイなメランコリー描写とパーカッシヴな硬質力学的アクション手法を細密に掛け合わせた詩的躍動型プレイ、を流麗敏活に紡いでピリッとしたスパイス感ある清新で凛々しい華を成す。
★一方、安定律動的スイング感の醸成と並行しつつ意表を衝いた奇襲速攻風のゲリラティックなサスペンス演出にもかなり大々的に力を注ぐ、ドラム&ベースの遊撃攻勢型のサポートも音空間全体の結構壮絶な迫真性・白熱性を高めて、頼もしい魅力を際立たせた、ほぼ一貫して極めてポエティックかつ極めてスリリングなニガみの効いたインタープレイ敢闘が続いて生鮮度バツグンに昂揚させ、また奥深い詩趣を堪能させてくれる高密度内容。
★その根底には繊細豊潤なポエティシズムやロマンティシズムが絶えないが、表層の上では決して甘くないシリアスな真剣勝負の生々しい立ち回り闘争!っぽいハードな鎧を確固と纏った、北欧耽美派ピアノ・トリオのダーク・サイドとも云うべき、愁いと不穏さ漂うちょっと不機嫌そうな面持ちの、フレキシビリティも抜群なアクティヴ・リリカル奏演が精悍軒昂に展開され、アルバム全体が一つの内省紀行詩組曲となっているようなイメージもある統一感充分の道程の中で、主役:ヨルミン(p)の、一音一音に揺るぎない確信を濃く宿した毅然・決然たるアドリブ妙技が何とも鮮麗に冴え渡って素晴らしい。
→仄暗くメディテーショナルな物憂き魂があてどなく闇の世界を浮遊してゆくかのような、センシティヴ&ノワールな詩情表現に北欧人らしい格別の深遠さをじっくりと発揮する反面、わりかしストレートアヘッドな硬派筋モーダル・ピアノのオーソドキシーを十分踏まえた半ば打楽器的とも云える激しいダイナミズム・アタック!(ドラマーでもあるというその本性・習性が顕れたか?)、にも圧倒的な気魄(と説得力)がみなぎっており、トータルなアウトラインとしては、繊細でファンタジックな哀愁浪漫的情景を苦味走ったハードボイルドな切り口でシビアに描出した、感じの全く独自なエッジの利いた、そして暗影に富む弾鳴キャラが重さと切実さをもって確立されていて卓抜だ。
01. Mola Mola
02. See The Unseen
03. Io
04. Sibilance
05. Lätta, Sväva, Inåt
06. Swan Of Snow
07. Pantanal
08. Oceanos
09. Omsorg
10. In A Distance
Christian Jormin クリスチャン・ヨルミン (piano)
Magnus Bergström マグヌス・ベリストレム (double bass)
Adam Ross アダム・ロス (drums)
2020年7月22&23日スウェーデン-ヨーテボリ、アッティステンのConcert Hall Sjöströmsalen録音
レーベル:
Losen
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デジパック仕様CD