★ケヴィン・ヘイズ(p)(1968年ニューヨーク州生まれ、コネチカット州グリニッジ育ち)、ベン・ストリート(b)(メーン州生まれ)、ビリー・ハート(ds)(1940年ワシントンD.C.生まれ)、というアメリカン・オールスター連名ピアノ・トリオの一編。曲はケヴィン・ヘイズのオリジナルが殆ど。
★きめ濃やかで端麗な清流の如き潤いを呈し、同時に骨太く分厚く角張った堅牢さをもって頑強にダイナミズムをも体現する、クリスタル岩石とも云うべき鮮明タッチのピアノが、ある時はフォーキー・ブルージーに甘美な牧歌的浪漫を映し、ある時は渋〜いテイスティー感漂う殺陣風のスクエアーなバップ節を紡ぎ、またある時は幾何学的パーカッシヴ指向に徹したニガみ濃いハードなアクションに没頭、かと思えば一転、しっとりとしたスウィート・テンダーな繊細バラード表現と硬質力学的立ち回りの両極端をドッキングさせた躍動型メランコリック技を繰り出して見せたりと、中々振り幅大きく自在でいて基本はあくまでメロディーの美や詩的情緒を重んじた、機動性抜群のアクティヴ・リリカル・プレイを敏活滑脱に綴って、瑞々しくもしっかり旨味豊かな骨芯の据わった華を成す。
★一方、機略縦横のゲリラ戦術に長けたベース&ドラムの安定感と意表性混在のアタッキングなサポートも、堅固なグルーヴと生々しいスリルを強力に高めて鮮烈なる存在感を際立たせた、全般に適宜ヴァラエティー豊かでありながら確固とバランスのとれた練達演奏の連続で、説得力も十二分に愉しませる会心打内容。
★4ビートでドッシリ重厚にスイングする寛ぎめブルージー路線あり、今風リズムに乗せてマイルドなリリシズム世界が耽美性半分・ダイナミックさ半分に形作られるロマンティック・グルーヴ調あり、ひたすらシャープ&ソリッドに大立ち回り速攻のぶつかり合い大会が嬉々溌溂と展開される甘さを排したハードボイルド曲もあり、の多彩な行き方を見せるが、その道程は決して甘いばかりではないものの一貫して歌心や情感とノリのよさを大切にした、伝統と今日性がごく自然に、細密に共存した均整絶妙な「現代ハード・バップ・ピアノ・トリオの真髄」とも云うべき、何げにバッチリ密度も濃い音景色が一点のブレもなく創出されており、そうした中で、ストリート(b)やハート(ds)の横槍とも丁々発止を演じながら結構毅然とした調子で鍛え抜かれた正に「一撃必殺」のアドリブ至芸を精悍に炸裂させるヘイズ(p)の、音ひとつひとつに圧倒的気魄のこもった入魂の敢闘がひたすらビシッと迫真力をもって冴え渡っており、全く見事。
→バップ(パウエル筋)やモード(ハンコック系)のオーソドックスなイディオムに則って鋭角的な殺陣の型に徹した躍動を見せる硬派攻勢や、昔ながらの粋な小唄的メロウ・フレージングにさりげない奥行きや雅趣を滲ませる寛ぎ風流プレイ、まろやかでちょっとポップなフォーク的歌い様が晴れ晴れとして清々しい耽美指向のリズミック文体など、いずれのアプローチにも確たる気合と研鑽の跡が顕れ、しかも気負ったところのない自然体の誠実真摯さ・粛々さが漂っていて好感度も満点だ。
1. New Day (Kevin Hays) 7:45
2. Elegia (Kevin Hays) 9:54
3. Unscrappulous (Kevin Hays) 3:36
4. For Heaven's Sake (Sherman Edwards, Donald Meyer & Elise Bretton) 11:52
5. All Things Are (Kevin Hays) 9:35
6. Sweet Caroline (Kevin Hays) 8:05
7. Twilight (Kevin Hays) 9:45
Kevin Hays (piano)
Ben Street (bass)
Billy Hart (drums)
2020年12月4&5日ニューヨークシティのSMOKEでの録音
レーベル:
Smoke Sessions
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デジパック仕様CD
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